中国で猛烈に愛される日本の異彩ラーメン店 あの吉野家をしのぐ海外店舗数を構える理由
当初の失敗の原因は、現地のスタッフに調理を任せたこと。長年守り続けた味千特有の濃厚なとんこつスープが現地に合わせた薄味のスープに変えられてしまったことにある。
そこで再挑戦では、絶対的な基本のラーメンのスープの味はかえない戦略にシフトした。自分たちの味を守るため現地スタッフの教育を徹底。海外で出店する際には、現地からその店のスタッフを熊本に呼び寄せ、本店でおよそ1カ月間、味千ラーメンの味を叩き込むカリキュラムを組んだ。
スープの味を守るためのこだわりが大成功へのカギ
味千は中国国内の各地に合計7カ所もの、食材製造工場を建設。中国全土に展開するお店向けに、全ての食材やスープを完全管理下に置く、食品管理のシステムを作り上げた日本流の徹底した品質管理を実地した。スープの味を守るために徹底的にこだわったことが、中国での大成功へと繋がった。
一方で変えたものもある。メニューの豊富さだ。実は海外味千のサイドメニューは大いにバラエティに富んでいる。
「海老フライ」「イカのゲソ揚げ」「ポテト」「ソーセージ」など、日本ではラーメンのサイドメニューといえば餃子やチャーハンが定番なくらいなものだが、味千のサイドメニューは多岐に及ぶ。
実はここは中国の食文化に合わせたのだという。中国では、食事のときにいろんなものを頼む習慣がある。中華料理は、様々な料理をテーブルにいっぱいに並べるのが定番。そこで味千では、サイドメニューの充実を図ったのだ。
さらに、各国の食文化に対応しようと目をつけたモノが「トッピング」。事実、中国の味千では16種類ものトッピングが楽しめる。たとえば豚骨スープのラーメンに照り焼きにした鴨肉を贅沢にトッピングした「照り焼きダックラーメン」。山椒の香りがきいた牛肉にガツンと辛さが癖になる、「ピリ辛マーラー牛肉ラーメン」などだ。
もちろん、中国以外の国でもその国の風土に合わせた独自のオリジナルメニューを展開している。
たとえばタイでは、トムヤムスープを豚骨スープとブレンドさせたトムヤムラーメン、オーストラリアではビーフステーキを大胆にも丸ごと乗せたステーキラーメン、シンガポールにはなんとザリガニをトッピングしたザリガニラーメンまである。
スープという味の根幹であり、ラーメンづくりの王道は崩さない一方、サイドメニューやトッピングなどを充実してバリエーションを豊富にする。守るべきところと攻めるべきところをうまく切り分ける。それが、中国という難しい市場で成功を収めた秘訣といえる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら