「セクシー田中さん」悲しい出来事の裏にある現実 ドラマ関係者のバッシング過熱に感じること

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セクシー田中さんの最終回(写真:ドラマ「セクシー田中さん」公式サイトより)

それを象徴していたのが、今作の脚本家が年末に発信した「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望」というコメント。本当にそう聞いたのか、それとも、うまく伝わらずに誤解を招いたのかはわかりませんが、これがきっかけで芦原さんが釈明の投稿をし、それが“原作の改編に対する是非”などの大きな問題に発展してしまいました。

どんな理由や意図があったにしても、悪意はなかったとしても、わずかな言葉のチョイスが取り返しのつかない事態につながりかねない怖さを感じさせられます。

絵や文字と映像では伝わり方が違う

ここで漫画や小説の実写ドラマ化そのものについてふれておきましょう。

ドラマに限らず漫画や小説を実写化する際、原作をそのままコピーするようになぞることは基本的にほぼありません。「そのまま実写化しても見づらい、感情などが伝わりづらい」「より物語や登場人物の魅力が伝わるようにしたい」「1話45分程度にまとめなければいけない」などの理由から脚色するのは当然とみなされているからです。

芦原妃名子さんの漫画「セクシー田中さん」

そもそも「“絵”や“文字”と“映像”では見る人への伝わり方がまったく違うため、そのままコピーするだけでは、むしろ原作の魅力が伝わらない」というのが共通認識。また、「すでにネタバレしている物語のため、実写化でより見ごたえを出さなければいけない」などの意識もあり、「原作の脚色こそ脚本家の実力が表れる」とみなすプロデューサーもいます。

ただ、原作者の要望に応えるのはもちろん、ファンが支持しているポイントも含め、プロデューサーと脚本家が「ここだけは変えてはいけないポイント」「絶対に入れなければいけないシーン」などの判断を間違えると批判は避けられません。

その点、業界で「脚本家の中で最も脚色がうまい」と言われる森下佳子さんは、昨年よしながふみさんの漫画を実写化したドラマ「大奥」(NHK総合)で、原作の魅力を広げ、俳優の熱演を引き出す脚本を作ったと称賛を受けました。

森下さんはそのほかでも、「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「JIN-仁-」「とんび」「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」(すべてTBS)などを手がけ、まさにハズレなしの名人。しかし、これらの名作は森下さんだけの力というより、石丸彰彦プロデューサーらの力も含めた脚色であり、やはり組織として機能することが重要なのです。

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