初の「出戻り総務官僚」が転職→復帰を選んだ本音 処遇に周りの反応…"リスク承知"で戻ってきた

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旧・郵政省を選んだのは、官庁訪問をする中で、職員と話が合ったのが大きいです。女性が多くて仕事がしやすそうで、当時は(民営化する前の)郵便局を拠点にした地域活性化ができないかとも思いました。

もともとデジタルやインターネットに詳しいわけではなかったのですが、仕事になれば勉強の連続になりますし。刺激的で、やりがいのある業務ができると感じて入省したという経緯ですね。

――やりがいを感じる仕事も経験し、順調にキャリアを積まれる中で、2022年夏に民間企業へと転職されました。どんなきっかけがあったのでしょうか。

プライベートと仕事の悩みが合わさり、さらに今は転職しやすい状況にもあると思ったのが理由です。

国家公務員の在職年数別退職者数

もともと主人も総務省の人間で、(私が退職する)1年前に転職しました。その時に生活のバランスが崩れたことが1番大きいです。

彼は夕方には家にいるようになりましたが、私はつねに終電に近い状態で、こういう生活でいいのか、と感じるようになりました。また役人同士だと機微情報を含めて話せますけど、彼は民間企業に行ったので、家で何を話していいか、距離感がわからなくなりました。個人的な生活に大きな変動があり、メンタル的に弱くなっていたと思います。

そうした中で、当時はスマホにマイナンバーカードの電子証明機能を載せる仕事を担当していました。スマホの構造やネットワークに関する知識が必要になり、「デジタルのことをほとんど知らないまま来たかもしれない」という反省を感じました。デジタルや民間企業の業態がどうなっているのかを見てみないと、自分の経験が全部上っ面になる。そんな思いもありました。

私は総務省に育ててもらった恩をすごく感じていますが、同じ組織に20年いると「ダレ」も出て、今後もモチベーションを維持して働けるのかという問題もありましたね。人生1回だし、1回民間企業で勤めようと思って辞めました。

転職活動を始めて1カ月で決まった

――総務官僚は、通信業界やコンサルへの転職も目立ちます。転職先はどう決めましたか?

普通に(転職サービスに)登録しました。採用する企業側は当然、これまでの役所での知見を生かしてほしいと思っているわけで、そうした理由もあって役人だと渉外系に行く人が多いです。

でも私は、やるならそれまでと全然違う経営戦略、マーケティング、新規事業の立ち上げといった仕事ばかり探しました。社会的な誤解を招くのは嫌だと思って、これまで関係したところはいっさい受けませんでしたので、企業は限られましたが、熱心に来ないかとおっしゃってくれた会社があり、転職活動して1カ月で決まりました。

役所を辞めても国のために役立つ仕事をしたいという思いはあり、会社は利益を出すためにありますけど、最終的には事業を通じて世の中に貢献できます。

転職先の会社は公共交通にかかわる事業を展開していて、世の中を効率化して人の負担を減らし、人間が人間であるための世界にすることに取り組むという考え方にも共感できました。

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