初の「出戻り総務官僚」が転職→復帰を選んだ本音 処遇に周りの反応…"リスク承知"で戻ってきた
――しかし転職から1年3カ月で、総務省に再び戻ることを決めました。
(前職では)管理職として新規事業部門の統括をお任せいただきましたが、結局、その時に役立ったのが役所で培った能力でした。
新しい事業を運営していくうえでサステイナブルなオペレーションを作っていくことが必要になったときに、どういう風に物事を回し、問題をトラブルなく済ませるのかという、処理能力が生きました。戦略をこうやると物事がこう動くというのを間近に見られましたし、会社にだいぶ貢献できたとも感じました。
ただ、自分の一番の持ち味を考えると、広い視野でいろんな物事を俯瞰的にみることで、それは結局、役所にいる時にずっと訓練されてきたことでした。それが自分の強みだったと思うにつれて、これからのキャリアでこの作業を続けていいか不安になりました。
「国のために仕事をしたい」という本筋に戻ると、会社を強くすることは当然国の経済力を強くすることにつながるけど、若干遠い。このままどうしようかと思い始めたときに(総務省で)経験者募集の話があり、民間で得られた知見を有効活用したうえで具体的な政策立案したほうが自分の中ではもっと貢献できてやりがいがあると思い、戻ってきました。
出戻る“リスク”を書き出した
――とはいえ待遇面も変わりますし、1度辞めた組織に戻る抵抗感はなかったのでしょうか。
小恥ずかしさはありましたね。周りの反応はすごく気になりましたし、内心「何コイツ」と思っている人もいると思います。
でも、そんなことを言っても進まない。戻る前に、自分が今の会社に残ったほうがよい面や、総務省に戻るリスクを書き出しました。
総務省に戻ってきて給料は下がりましたし、拘束時間も長くなっています。ただ、それに比べても霞が関ほど勉強できるところはないと思いますし、世の商慣習を変えるような大きな影響力のある仕事ができる経験はなかなか民間では難しい。戻ったほうが自分自身楽しいし、やりがいがあると思いました。
国全体の基盤を強化するうえでこういう(出戻り)ケースを作っていかないと、という思いもありました。どういうふうに処遇されるかわからないし、周りにどう思われるかもわからない。正直チャレンジングでリスクがあることをしていますけれど、後悔は全然ありません。
――平松さんは室長として戻りましたが、入省同期は室長級より格上の課長級になっています。年次主義の印象がいまだ強い霞が関で、その点での不満はありませんでしたか。
むしろ、そのほうがいいかなと思いました。戻ってきて急に同じだと目立って嫌だから、課長では戻りたくないって私自身思いましたし、総務省としてもいきなり課長はさすがに難しかったでしょう。初めてならば、ある程度仕方がないと。
ただ、(出戻り)希望者がもっと増えれば、この状況が続くことはよいとは思いません。霞が関の仕事は、国会対応といった民間とは違う特殊性もあるので、国としては行政経験がない人を管理職で採用する不安はあるとは思いますが、出戻りの場合は経験もあるので、課長補佐で辞めた人間が管理職で戻るなどといったキャリアアップにつながるようなルートができていけばよいと思います。
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