初の「出戻り総務官僚」が転職→復帰を選んだ本音 処遇に周りの反応…"リスク承知"で戻ってきた

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――民間と役所で違うと感じた点は。民間企業での経験は現在の仕事に生きていますか?

組織文化の醸成については、企業のほうが一生懸命取り組んでいたと思います。

国の場合、「国のために働く」という一種の社是が口に出さなくても共有されていますが、企業は必ずしもそうではなく、一体感を醸成するため、経営方針を部下に説明してディスカッションしなければいけない。

あと民間にいたときは、「難しくて言っていることがわからない」と言われ、自分自身の物差しでモノを見ちゃいけないと思いました。役所だと、役所や国会の用語があり、「一を言えば百わかるだろう」という感じで通じてしまうところがある。でも民間では説明しないと伝わらないことが多々ありました。かみ砕いて説明することが結果的に相手との関係を強化することにもつながり、マネジメント能力はかなり鍛えられて今も役立っていると感じます。

総務省に戻ると、本当にみんな辞めていって中途の方が増えていてびっくりしました。今の直属の部下も転職者です。中途採用でくる人はわからないのが当たり前だと思ってかみ砕いて説明したり、こう考えているからこうやってほしいと、自分の考えをちゃんとデリバーしたりするようになりました。

個々人が強くなる組織作りが必要

――若い世代を中心に人材の流動化が進む霞が関の現状をどう見ますか。

組織にとって活力になるので、個人的にはもっと人材の流動化は進んだほうがいいと思います。

ただ、一時的にいろいろしわ寄せはあると思うので、それをどう組織としてケアしていくかが重要になります。もちろん、所属する組織の活性化は必要ですし、昔は「自分の人生=組織」みたいな考えでしたが、自分と組織は違うものという認識に立ったうえで、個々人が強くなることで組織が強くなるサイクルで回さないといけないと思います。

そのための1つの考え方として流動化があります。組織をサステイナブルにマネジメントしつつ、職員が強くなる道を探っていくしかないのではないでしょうか。

若い人は刹那的で、転職することによって一時の収入アップや日々の忙しさから逃れたくなる感情を否定しないし、私もそれで辞めたフシもあるのですけど、役所にとどまる・とどまらないにかかわらず、長い人生の中でどういう強みを生かして仕事を続けたいのかというキャリアプランを描くことが重要になっているのだと思います。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞東京本社の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、ITベンダー業界を中心に取材。情報通信、メディア、都市といったテーマに関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んでいた。

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