解職された武井氏を含め、群馬テレビではこれまで、大株主である群馬銀行の出身者が社長を務めるのが慣例となっていた。1986年に群馬テレビに入社した中川氏は、生え抜き組として初めての社長となる。
中川氏は、武井氏の進めてきた経営方針を全面否定しているわけではない。
「前社長の取り組んだ『業務効率の改善』自体は功罪で言えば功であり、良かった部分は引き継いでいく。問題だったのは、急激な改革を誰にも相談せず、いきなり明日からやろうとした手法だ」(中川氏)
この数年の間に人材流出なども深刻化し、当面は事業の継続に向けた基盤固めが優先される。中川氏は「外注先は切るところまで切ってしまっていて、もうこれ以上切りようがない。社員数もここ3年で大幅に減っており、このままでは事業が立ちゆかなくなる。安定的な採用計画を作るために、今動き始めている」と語る。
若手社員の能力を引き出す環境を
コスト削減や業務効率化、新規事業の創出などは、どのローカルテレビ局も直面している共通の課題だ。あるローカル局の幹部によれば、キー局のネットワーク系列に属さない群馬テレビのような独立局では、トップダウン型で改革などが進められる傾向がある。「今回のケースは、それが悪い方向に働いていたのではないか」(同)。
「今後はボトムアップ型で、若い社員の考え、センスを引き出し、彼らが自由にのびのびと仕事をできる環境を作るのが私の仕事。当社には若くて優秀な人材がいて期待している」。中川氏はそう力を込める。
配信サービスの普及に伴うテレビ離れが進む今、ローカル局の衰退は著しい。設立から54年を迎える群馬テレビは、社長交代を経て、いかに荒波に立ち向かうのか。本当の戦いはこれからといえる。
(※解職された武井前社長のインタビューはこちら:群馬テレビ前社長が大反論「あんな発言してない」)
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