台湾・民進党勝利の陰で逝去した民主革命家の人生 台湾民主化に命を懸けて闘った施明徳さんの人生
世界に民主主義国はざらにあるが、その民主主義国でも問題はある。中国の一党制と比較して台湾は民主主義だと威張ったり、褒めたりすることは台湾にとって禁物だ。それが本当に民主主義なのか、問題はどこにあって、どう解決すべきなのか。
スローガンを復唱するだけでなく、細かな検証がなければ、台湾の衰退を加速させることになる。それはまさに、民主主義の腐敗を叫んだ施明徳さんが、陳水扁総統退任要求運動のときに呼びかけたことではないだろうか。
現在の民進党に真のリアリストはいるか
「民進党は変わった。昔は施明徳さんや許信良さん(施明徳さんの前後に民進党主席)たちのような尊敬できる人たちがいたのに、今は利益集団になってしまった」。これには、当時を知るほとんどの台湾の人が賛同する。
日本はどうか。反中感情に基づき、中国の対極として台湾を手放しに褒めそやす傾向が最近は強い。日本が台湾を重要なパートナーだと考えるのであれば、そんなことでは台湾に対する本当の理解、台湾との正常な関係構築を阻害することになる。
「民主主義という価値観を共有する」という空虚な言葉が飛び交うが、では台湾の民主主義の中身がどのようなものなのか、考えての発言なのだろうか。
日本は、中国との関係ばかりで台湾を見過ぎだ。とらえどころのない14億人の巨大な中国大陸に比べて、人口2300万の台湾が理解しやすいと考えるのは間違いだ。
「親日台湾」という日本人の認識にも、より深い検証を加えなければ台湾の人々の真意は読み取れない。台湾社会の複雑さは外部の人間からはわかりにくい。
台湾の複雑さを理解することの難しさは、日本人にとってだけのことではない。単純に「統一」だとか「同胞」だとかの目で台湾を見がちな中国の人たちが、台湾の人たちの複雑な心情を本当に理解することは、いかに台湾に対する知識が豊富にあったとしても、極めて難しい。
施明徳さんは、台湾の民主化を進めるために命を懸けた。一生、権力に対して戦い続けた。しかもスマートで格好よく、そして楽観的に。その彼が今の民進党や国民党を、さらに民衆党を、そして台湾を、中国を、日本を見たら、いったいどう思うだろうか。
施明徳さん死去の知らせを聞いて、深い感慨に浸ってしまった。台湾の尊敬する「革命家のロマンを持つ実務家」の冥福を祈る。
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