「40系気動車が消える」JR氷見線・城端線の今後 LRTやBRT構想を経て、第三セクターに移管

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そこでいっそのこと、BRTならばコストダウンが図れて市中との直通も容易に可能との案も俎上に上がる。ただしBRTは連接バスでも既存LRTの車両と輸送力面で大差なく、線路を専用道に作り替える工費と工期を要し、その間の代替交通の確保こそが大きな問題となる。

ところでもう一つ、高岡はじめ地元の根本的な希望としては、現状の不定時隔で1時間に1本程度の運転も、新幹線駅へのアプローチとしては改善したいところで、再三にわたりJR西日本に増便を求めてきた。それで金沢開業時に城端線4往復の増発が実現したが、これはむしろ異例で、管内に多くのローカル線を抱えるだけに、JR西日本としても積極的な施策は難しいだろう。

そのような状況で膠着し、高岡駅平面横断の協議にはあいの風とやま鉄道の参加が欠かせないとの話合いの中で急速に醸成されていったのが、地域の最重要課題として対処するには地域自らが引き受ける、との考えである。JRには投資のインセンティブが働かないが、地元会社ならばその価値を高められる。交差するダイヤを相互に調整するなら一体的にハンドリングできる組織でありたい。さらには両線から富山への直通の増強や、運賃体系の一体化も可能になり地域住民におけるメリットも大きい。とすると、あいの風とやま鉄道へ移管するのが最善、と判断された。

普通サイズの車両を入れて、毎時2本化も

こうした検討の結果、2023年3月に出された利便性・快適性向上策の中で、LRT化はせず普通鉄道サイズの新車を導入する方針が明らかにされた。7月には「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(2007年)による国の支援を得るため、城端線・氷見線再構築検討会が設置された。同法に基づいて経営が厳しい鉄道事業者の形態を再構築した事例は過去に11例あるが、自治体が先導する形で、ローカル線にしてはある程度の輸送量がある路線を強化し、地域を成長させるために再構築しようとするのは今回が初めてになる。

そして主に以下の内容で素案が立てられた。2024年2月から2034年3月までの10年間を事業期間とし、この間2028年度までに新型車両導入、交通系ICカード導入、運行本数の増強(日中毎時2本化)、パターンダイヤ化、時間短縮のため分岐器改良とホーム嵩上げを行い、これらと同時期に両線はあいの風とやま鉄道へ移管する。そして2033年度までに既存施設の再整備をし、城端線と氷見線の直通運転を実現する。これらに対してJR西日本は150億円を支援し、両線に接続する交通も導入を促進する、というものだ。

この計画は2023年12月18日の第5回検討会で正式にとりまとめられ、実行に向けて「城端線・氷見線鉄道事業再構築実施計画」として12月22日、国土交通大臣に申請された。

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こうして城端線・氷見線は一気に新たな姿を予測させるに至ったわけで、現在の姿はあと数年となった。地方を蘇らせるフットワークのよい交通手段がどのように具体化するのか、異色の先進事例として注目を集めている。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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