「初の黒人女性学長」辞任巡るハーバード大の闇 秘密審議でお茶を濁す大学の大きな問題

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学長辞任の決断を発表した書簡の中で、ゲイ氏は大学の理事会「ハーバード・コーポレーション」のメンバーと相談した結果、「私が辞任することがハーバードにとって最善の利益であることが明らかになった」と述べた。「私たちのコミュニティーが、個人ではなく組織に焦点を当てることで、この極めて困難な状況を乗り切れるようにするためだ」。

「初の黒人女性学長」を辞任に追い込んだ憎悪

53歳のゲイ氏はその一方で、自身の学術的な経歴を擁護し、高度に個人的で人種差別的な攻撃の標的にされているとも述べた。

「このような状況の中で、憎悪に対峙し、学術的な厳格さを堅持するという、私のアイデンティティーの根幹にある2つの基礎的価値観に対するコミットメントに疑問が投げかけられることは苦痛であり、人種的な憎悪に駆られた個人攻撃や脅迫にさらされるのは恐ろしい」

昨年、ゲイ氏が学長になるというニュースは、ハーバード大学にとって画期的な出来事だと広く受け止められた。ハイチ移民の娘で、マイノリティー(少数派)の政治参加と政策決定におけるマイノリティーの意見の反映度合いを専門とするゲイ氏は、大学が人種を考慮した入学選考を行うことを連邦最高裁が否認する中で学長に就任した。

ゲイ氏はまた、富豪の投資家ビル・アックマン氏を含む一部の有力な卒業生の主要な標的ともなっていた。反ユダヤ主義に注意を向けるアックマン氏は先月、ハーバード大学では「D.E.I.役職基準」(D.E.I.は多様性、公平性、包摂性を指す)を満たす者しか学長候補として検討されることはなかった、とソーシャルメディアで述べていた。

ゲイ氏の辞任は、1月1日に「ワシントン・フリー・ビーコン」に掲載された署名のない申立書で最新の盗用疑惑が広がったのに続く動きだった。フリー・ビーコンは、ここ数週間にわたってゲイ氏を攻撃するキャンペーンを主導してきた保守派のオンラインジャーナルだ。

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