ロシアの「強硬な地政学」を許してはならない

スウェーデン元首相、東方諸国の前途を憂慮

「より広い欧州」というEUのビジョンはソフトパワー、経済統合、長期的な制度構築などに頼っているが、プーチンの「より広いロシア」は脅しと武力に依存している。EUが長期の地理経済学(ジオエコノミクス)を追究する一方、ロシア政府は短期の強硬な地政学(ジオポリティクス)を振り回している。

クリミアを統合し、ドンバスで分離独立派の武力行使をたきつけていた時期、ロシアの狙いはウクライナを不安定にし、ロシアの傀儡(かいらい)とすることだった。

EU首脳らはリガの首脳会談で、ウクライナ、グルジア、モルドバと結んだ自由貿易協定を再確認した。協定を実施するEUの公約が最も重要なシグナルとなる。大規模なプロパガンダ、強烈な経済的圧力、あからさまな軍事侵略にもかかわらず、EUは東方パートナーシップとの距離を保ちながら、近隣諸国へEU加盟のオファーを続けた。

欧州がすべきこととは

欧州は今後の試練を過小評価するべきではない。私が2013年にビリニュスの会議を終えたとき、これほどまでの侵略と混乱を引き起こす用意がプーチンにあったとは認識していなかった。

欧州の政治的かつ経済的な関与が求められている。ウクライナでは何世紀にもわたって失政が繰り返されてきた。欧州との協定や統合の成果を手にする前に、改革に伴う痛みを経験しなければならない。

ロシア政府やその同盟国が勢力を増すことを許せば、東方パートナーシップ諸国を弱体化させるだけでなく、欧州自体の平和を危険にさらす可能性がある。

ある時点で、北大西洋条約機構(NATO)とロシアのあからさまな対立のリスクが強まるかもしれない。

東方パートナーシップに対抗して、大規模な偽情報発信から戦車や兵士の派遣まで、さまざまな手段が採られている。現状を維持するだけでも成功だ。衝突は回避されなければならない。

週刊東洋経済2015年6月13日号

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