NY生まれ「DASSAI BLUE」は米国で成功できるか 85億円の投資。「現地の評価や専門家の声」は?

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今、ヤンキー・スタジアムでは、ホームプレートおよびLED看板後ろの回転看板に「獺祭」のロゴが表示されている。

また、一部プレミアムシーティングエリアで「獺祭45」 300mlを約40ドルで販売。フードはピザやホットドッグなどのアメリカンフードに交じって寿司が販売されており、その寿司とともに日本酒を注文するアメリカ人も多いのだという。

地元の球団や大学など、異ジャンルを有機的に巻き込みながら、日本酒という文化と獺祭ブランドを確実に広げていく。

こうした取り組みは、単純に日本酒を輸出するだけでは実現しない。まさに現地に醸造所を作り、地域に根ざしたからこそ生まれたつながりだ。

「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」が投じた一石は、水紋が徐々に広がるように、ニューヨーク全土から全米に、そして世界に広がっていくことを鮮明に予感させる。

「DASSAI BLUE」への反響と今後の課題

販売から3カ月、すでに「生酒を醸してほしい」というリクエストも入るなど、「DASSAI BLUE」への反響も多いという。

一方で、前出のマルセド氏は「今後の課題は、現地醸造といういまだかつてない経験のなかで、プレミアム日本酒としての品質をつねに維持し続けることができるか、という部分でしょう」と指摘。

現在、アメリカでのアルコール市場のなかで日本酒が占める割合はわずか0.2%。今までの“輸出”だけでは打開することができなかったこの0.2%の壁は、現地の醸造所開業によってどう変わっていくのか。

踏み出した一歩は小さいかもしれないが、地域を巻き込み、異国の地で真に愛されていくことによる変化は確実に起きるであろう。

ニューヨーク生まれの「DASSAI BLUE」が現地でプレミアム日本酒を醸し続けること、そしてアメリカ市場のSAKEマーケットの行先に、熱い視線は引き続き注がれている。

山路 美佐 食と旅ジャンルの編集者

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やまじ・みさ

食と旅ジャンルの編集者。大学卒業し総合商社に入社。その後出版社へ転職し、婦人誌ほかで食・旅の編集を担当。グルメ検索サイト「ヒトサラ」副編集長を経て、現在はフリーの食と旅の編集者に。美味探求の旅は30カ国以上にのぼる。月の半分は国内外を飛び回り、最前線で働くシェフたちやホテル、生産者、日本の地方の魅力を取材。編集本に『広東名菜 赤坂璃宮 譚 彦彬の味 』(世界文化社刊)。Instagramでは、日々の食と旅の出合いを綴っている。

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