NY生まれ「DASSAI BLUE」は米国で成功できるか 85億円の投資。「現地の評価や専門家の声」は?
そもそもニューヨークでの醸造所開業は、旭酒造が自ら探しに行ったのではなく、CIAからのオファーがきっかけだった。
当初は、大学のカリキュラムの一環で日本酒醸造を学ぶために、敷地内に醸造所を作ってほしいという相談だった。
それを聞き、日本酒を正しく知ってもらえる教育機関とともに醸造所を作ることは、「世界に日本酒の文化を広める」という使命をかなえるチャンスだと感じたという。
ただ、敷地内に小さな醸造所を作ってもビジネスにはならない。そこで、近くに醸造所を作ることを逆提案したのだという。
「以前から海外に醸造所を作りたいとは思っていました。世界に日本酒を飲んでもらう文化を醸成するには必要だと思ったからです」とは、桜井会長。
「私が旭酒造の経営を継いでから、地元ではなく大都市である東京での販売を見据え、最高品質の日本酒『獺祭』を造りました。それが売れて、転機となりました。最高品質の酒を武器に、大きな市場に挑戦する。そうすれば結果はついてくるという確信のもと、いずれは世界に進出したいと考えていました。それは日本酒という文化を世界に広めるという使命もありましたし、同時にビジネスとしての魅力もありました」と振り返る。
初期投資は85億円に膨らんだが…
しかしこれが、経営面からも想像を超える試練が待っていた。
2016年、30億円程度を予定し着工。ところがみるみる予算が膨らみ、最終的には85億円を超えるほどになってしまったのだ。
2015年の旭酒造の総売上が60億円だったことを考えると、相当なリスクもあったはずだ。怖さもあったが、腹を据えて突き進むと決意した桜井会長に、酒の神様は味方した。
着工後、数年後には開業すべく動いていたが、COVID-19の影響で工事が頓挫。一瞬逆風に見えたが、これが功を奏した。
2020年から始まったコロナ禍により、家で食事とともに楽しみたいと日本酒を買う人が世界中で増え、思いがけず獺祭の輸出量がぐっと上がったのだ。
需要に応えるべく、現場の醸造体制も強化。そうして売り上げが2021年には145億円、2022年には165億円と、7年間の間で2.7倍以上にまで急増。
その結果、2023年の開業時までに85億円に膨らんだ予定外の投資額も吸収できたのだ。
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