「ヤバい温暖化」に本気で挑む23歳化学者の生き方 10歳からはじめた研究活動はもうすぐ14年目
「その可能性は0%でもあり、100%でもあると思っています。今のまま何も変わらなければ奇跡が起きる可能性は0%。温暖化は止まりません。でも、温暖化を止める方法はすでにわかっています。世界で研究がはじまったばかりの、空気中の二酸化炭素を直接回収する『CO₂除去(CDR)』という技術で、10年くらい前から海外のベンチャー企業などが装置開発を進めています。
この技術で作った、室外機のお化けのようなモジュールを何十個もつなげた超巨大装置を約2000平方キロメートル敷きつめれば、世界中の1年間の二酸化炭素排出量を全部チャラにできるんです。広さのイメージは、ぼくが生まれた山梨県の半分くらいの面積ですね。場所は地球上のどこでもいいので、人が住んでいない砂漠や南極を使えば温暖化は100%解決できます」
それならすぐにでも実行したほうがいいと思ってしまうのだが、現実的にほぼ不可能と思える大きな課題があった。
「初期費用だけで約3000兆円の予算が必要なんです。すごく大きな金額ですけど、脱炭素のために2兆円出すと言っている日本企業もあるくらいですから、世界中の国がお金を出し合えばできないことはないはずです。でも世界中の人々に『地球温暖化を止めたい!』という強い意識がなければ、理解も得られませんしお金も集まりません。科学的に証明されていても気候変動を信じない人もいますから、現実的には難しいでしょうね」
村木さんが二酸化炭素に興味を持つようになったのは小学校高学年の頃だ。小4のとき、祖父にもらったスティーブン・ホーキングの『宇宙への秘密の鍵』を読んで、二酸化炭素に覆われた火星に住みたいと夢見るようになったのがきっかけだった。
5年生の夏休みの自由研究も火星への移住がテーマ。当時、通っていた山梨学院大学附属小学校(現:山梨学院小学校)の先生たちも、村木さんの研究に理解を示し応援してくれたという。
中学生のときには、「自分たちで温暖化は止められるという意識をみんなが持てるように、小型分散化して二酸化炭素を回収できる装置があればいいのではないか?」と考え、「二酸化炭素吸収装置」の研究をはじめた。ところが中学校の先生は、「そんなことできるわけがない」「やっても無駄」と言い、研究課題として実験していると「やーめーろー!」と笑って邪魔してきたと著書につづっている。
しかし村木さんはあきらめなかった。その頃すでに実験や研究は生活の一部になっていたからだ。
あるとき、自分の部屋を改造して火星で植物を育てる実験をしていたら、肥料入りの臭い水が家中に漏れたこともあったそう。そんな失敗にもめげず化学者になると決めていた村木さんは、人の夢を笑う大人のことなど気にしなくなっていたのだ。
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