ドラッグ再編のカギは「2代目」への世代交代だ ウエルシア社長が語る「売上3兆円」までの道筋

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――同業のM&Aのほか、売り上げ3兆円到達には何が必要ですか。

成長戦略の柱の1つは海外だ。シンガポールで12店舗(2023年2月末時点)を運営するほか、イオングループとしてはASEANや中国でのビジネスに積極的だ。ウエルシアとしても今後、アジア地域での事業が成長の軸になってくるだろう。

現時点ではウエルシアがシンガポール、イオングループがマレーシアなどのショッピングセンター内でドラッグストアを運営している。これらを統合し「イオンのドラッグといえばこういうもの」というフォーマットを構築していくことが大切だと思う。それができれば、海外でも年間数十出店ができるようになるだろう。

もう1つは介護だ。20年近く取り組んできたが、正直あまり成長していない。要因は内部のリソースだけに頼ってきたからだ。これからはプロの人たちとの取り組みを模索し、介護分野でのM&Aもあり得る。

介護は施設や訪問、配食など、サービスごとに切り抜くと非常に利益が取りづらい。ただイオングループであれば水平統合でスケールメリットが出せるし、垂直統合だって考えられる。配食や日用品周りの商品提供も行いつつ、運動機能を高めるためのサポートも行う、ということだ。大きな領域で介護を考えれば、利益を出せるはずだ。

OTCも提案できる薬剤師を増やす

――どんなドラッグストアに変えていきますか。

目指しているのは「健康ステーション」。調剤併設店は増やしているが、調剤業務はいずれ工場化が進むだろう。重要なのは、付加価値をつけること。健康や美容に関する悩みを何でも相談でき、それに応えることができる、いわばコンシェルジュのようなドラッグストアを目指す。

「核」となるのが薬剤師だ。仮にOTC(一般用医薬品)の名前を知らずとも、成分を見れば効能などを瞬時に理解できる。さらに「白衣の魔力」は強く、お客さんから安心感を持って相談してもらえる。従来は各店舗で調剤薬局での業務で登録していたが、現在は物販でも接客ができるよう登録し直している。薬剤師がOTCなどを提案していける店を増やしていく。

ヘルス分野の他業態を巻き込んでいくことも重要だ。ドクター(医師)の領域になると、薬剤師では対応しきれない。ドラッグストア店内で外部の医療機関の遠隔診療を受けられるようにしたり、医療機関と提携して在宅医療を受ける患者さん向けの調剤業務を当社の薬剤師が担当したり、医療法人との連携を深めていきたい。2024年2月には新しい取り組みを実験したいと思っている。

「ドラッグストアはどこでも同じ。欲しいものが揃っていて、なおかつ安ければ良い」というのが消費者の感覚かもしれない。ただそれではダメだ。健康に対するサポート、アドバイスをあらゆる面から行える存在になりたい。この構想に魅力を感じてくれる同業者は多い。こうした会社とはパーパスを共有でき、組みやすいだろう。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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