「部分最適」でDXに失敗する企業に必要な視点 成長と競争優位獲得を実現する「再配線」とは

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最後に、企業文化のRewiredについて触れておこう。

多くの経営者は企業文化の重要性を認識しているが、デジタル文化を構築するためにはどのような手段が必要であろうか? デジタル文化を育てるためには、リーダーに期待するリーダーシップの属性を明確にし、それらの形成の進捗を追跡することから始めることが必要である。

DXを進める際に、企業の組織文化に真っ向から取り組むことで、変革が成功するために必要な心構えや行動の変容を強化できる。出発点を定義し、定期的な調査を通じて進捗を測定することは、あるべき文化的属性に対する変革状況を理解する良い方法である。

DXは、他のどのタイプの変革よりもスキルの構築を必要とする。その理由は、変革のスコープと速度が組織全体に大きなプレッシャーをかけるためである。新しい才能の育成に向け、適切に設計し継続的に投資されるトレーニングなくしては、既存組織が変革への抵抗を引き起こすことになる。成功する企業は、必ず次の3つの基本的なスキル構築の取り組みに焦点を当てている。リーダーシップのスキルアップ、広範なチェンジマネジメントプログラム、そして重要な役職に対するリスキリングである。

デジタル企業におけるリーダーシップ属性
デジタル企業におけるリーダーシップ属性(『マッキンゼー REWIRED』より)

変革の時代はすぐそこに来ている

以上、本稿ではDXを成功させ、企業を持続的に成長させ、競争優位を獲得するために必要なRewiredの考え方と具体的な方法について解説してきた。

これからの20年は、データ・AIの世界が続く。自社が持つ人、ノウハウ、技術とデータこそが差別化の源泉になる。それを理解し、いち早くRewiredしたものだけが、生き残れる時代がもう来ているのだ。

本稿がその時代を勝ち抜くための参考になれば幸甚である。 

黒川 通彦 マッキンゼー・デジタル、東京オフィス、パートナー
くろかわ みちひこ / Michihiko Kurokawa

マッキンゼー・デジタル部門の日本統括パートナー。26年以上にわたり日本のデジタル変革をリードしてきた経験とコアテクノロジーの知見を活かし、金融機関・製造業・小売業など複数の業界において、DXプログラムを支援中。日本におけるDXを加速すべく、書籍『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』を出版。デジタルによる日本の企業価値向上をモットーとし、収益改善による足腰強化に始まり、本業の売上成長を経て、最終的には新事業による新たなイノベーションを実現。世界に輝ける日本を夢見て、日々、企業変革に情熱を燃やしている。

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