「部分最適」でDXに失敗する企業に必要な視点 成長と競争優位獲得を実現する「再配線」とは

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本稿ではDXを例に、Rewiredのアプローチについて解説する。というのもどの企業もDXの必要性を認識して進めようとしているが、古く絡み合った組織や体制をそのままに他社のデジタル化事例を局所的に適用しようとし、進まない、あるいは失敗に終わるケースが散見されるからだ。DXの推進においてRewiredは必要不可分である。

低下する日本の競争力とDXの現状

日本の世界競争力ランキングの順位をご存じだろうか。IMD(スイスに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所)の発表によると、1989年日本の国際競争力は世界1位だったが、その後リーマンショックとともに日本の順位はどんどん下がり、2023年の発表では35位で過去最低である。デジタル競争力も2022年の発表では29位で、こちらも過去最低である。

日本企業は過去には大きな強みだった企業文化を、デジタル・AI時代にも変えていない。それは、ボトムアップ・根回し・合議制などである。欧米のトップダウン文化とは真逆の文化である。欧米はゴール設定を非常に高く置き、そこから逆算して何をすればいいかを考える。DXはその高い目標を達成するために必須であるという考え方だ。一方、日本は以前から現場が強く、現場が確実にできると確信できるまで、時間を使って検証を進める。

マッキンゼーが評価したところ、DXの失敗プロジェクトの多くが計画や合意形成が不十分であったことに起因していることがわかった。戦略的な計画策定の段階で経営陣の中で認識のズレがあると、DXの実行は確実に混迷を極めることになる。

日本企業にも見られる典型的な落とし穴として、以下の5つが挙げられる。

①経営陣のデジタルへの理解がそれぞれ異なるため、議論がかみ合わない
②経営陣があまり価値をもたらさないプロジェクトに労力を注いでしまう
③経営陣がテクノロジーソリューションに過度に集中し、肝心な人材やケイパビリティの要件を見落としてしまう
④変革の対象領域が広すぎるため投資が薄く分散してしまう
⑤経営者が他の経営陣に責任を委譲してしまう

 

もしこれらの落とし穴のどれかが現在あなたの会社に悪影響を及ぼしているならば、一度立ち止まって、目指すべきDXを再考すべきである。

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