「部分最適」でDXに失敗する企業に必要な視点 成長と競争優位獲得を実現する「再配線」とは

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DXを成功に導くためにやるべきRewiredの最初のステップは、ビジネス主導型のロードマップを経営陣がコミットすることだ。必要なDXロードマップは、注力する事業ドメインと対応するデジタルソリューションが、短期・中期的に相応の価値を創出するよう計画され、それに付随する財務計画が示されるべきものである。

経営陣は事業ドメイン別のロードマップにコミットしており、変革により期待される効果が、企業のビジネス上の目標とインセンティブに組み込まれていることが望ましい。これが典型的な「絵にかいた餅」にならぬよう、変革全体のチェンジマネジメントと明瞭なガバナンスの仕組みを構築し、ロードマップの進捗について測定可能かつ明確な四半期ごとのマイルストーンを設定することも求められる。

日本企業では、中期経営計画などでDXロードマップが示されるが、これは経営陣全員が合意を表明し「契約を交わす」ためのものであるべきと考える。実際、ロードマップは経営陣が変革の遂行に向け責任を持って取り組むことを約束し、内外に向けて署名する契約書なのである。また、DXは究極の企業内チームスポーツであるため、最高経営責任者以下、誰もが重要な役割を担っており、円滑な協働なくして変革を成功させることはできない。

デジタル人材を早急に内部充足する

人材についてもRewiredが必要だ。

どのような企業も、「アウトソーシング」、「ベンダー丸投げ」では、企業を持続的に成長させ、競争優位を獲得することはできない。企業のDXとは、プロダクトオーナー、エクスペリエンスデザイナー、データエンジニア、データサイエンティスト、ソフトウェア開発者など、デジタルの専門知識を持つ優秀な人材を自社で抱え、彼らがビジネス部門の同僚たちと肩を並べて協働することを意味する。

適切なデジタル人材の確保には、他のどの優先事項よりも長いリードタイムを要するため、できるだけ早く取りかかる必要がある。最良のデジタル人材プログラムでは、採用だけにとどまらず、従業員への魅力的なバリュープロポジション(価値提案)の立案と実現、よりアジャイルでデジタルな人事プロセスの開発、そして優秀な人材がさらに活躍できる環境づくりまで徹底して取り組む。

どれだけ大胆な野心を持っているかにもよるが、DXに成功する多くの企業の場合、1~2年後には、社内のデジタル人材を70~ 80%に到達させるという目標を実現することができる。

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