全国に2%程しかない「男子校」の知られざる現実 少女漫画の中の男子校はリアル?<後編>

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辛酸:いままでは小学校を背負っていたわけで。

おおた:そうそう。

辛酸:筑駒の取材記事に、授業中に生徒たちが勝手に立って歩き回って、すごいひとのまわりに集まるってありますけど、これはどういうことですか?

凹沢:先生がものすごく難しい問題を出して、ごく一部、それを解けるひとがいて、そのまわりにほかの生徒が集まるみたいなことが起こるらしいんです。

オレたちの高校のほうが東大合格者が多い!

辛酸:一般的な学校で問題行動的に生徒が歩き回っちゃうのとは意味合いが違うんですね。

凹沢:ただ、この漫画をやっていてつくづく思います。勉強ができるってすごいことなんですけど、それをこんなに真面目にアピールするひとたちって、冷静に考えたら滑稽でしかなくて。

おおた:その通り。そこをうまくいじっているのが、「かし恋」ですよね。

辛酸:ひとの視線を勝手に意識したりとか。

凹沢:だってもう、オレたちの高校のほうが東大合格者が多いとか言っちゃってるひとって超ダサいじゃないですか。でも、かわいいですよね。

共学カップルに対する、これ以上なく情けない負け惜しみ。だが、男子校生には、こうやって心を落ち着かせるしかない……ときもある?(画像:「かしこい男は恋しかしない」)

おおた:作中でも、東大に入ればモテるはずだ、みたいに主人公が思っているふしがありますけど、そもそも「東大生だから」という理由で好意を抱かれてもちっとも嬉しくないじゃないですか。

辛酸:それなら、ハーバード最強ですよね。モーリー・ロバートソンさんとかパックンさんとか。

『かしこい男は恋しかしない 1』(集英社ガールズコミックス)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

おおた:そう。モテない男が札束ちらつかせて女性の気を引こうとするとか、いちばんみっともないでしょ。そういうのに頼っている限り、実はいつも不安なはずですよ。もっと強いのが出てきたら、鞍替えされちゃうわけだから。

凹沢:たしかに、それって女性でいったら、「若いから付き合いたい」って言われるようなものですよね。じゃあ、年取ったらダメなの?みたいな。それはイヤですね。

おおた:大学名や会社名でモテたって何にもならないということに、「かし恋」の主人公たちがいつ気づくのかを、末永く見守りたいと思います。

凹沢 みなみ 漫画家

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おうさわみなみ / Minami Osawa

「別冊マーガレット」で「かしこい男は恋しかしない」を連載中。

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辛酸 なめ子 漫画家、コラムニスト

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しんさん なめこ / Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)など。

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おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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