全国に2%程しかない「男子校」の知られざる現実 少女漫画の中の男子校はリアル?<後編>
おおた:いまはたしかにエリート教育において男子校優位なので、男子校出身者がいまの世の中をつくってきたみたいな錯覚を多くのひとがもっていますが、男子中高一貫校が東大合格者の上位を占めるようになったのは1970年代後半以降ですし、東大において私立高校からの入学者数が公立高校からの入学者数を上回っていったのは1990年代のことですから。
辛酸:じゃあ全然最近のことなんですね。
おおた:だから、いまの社会をつくったのは男子校出身者だというのは間違いです。
辛酸:自民党のひとの出身高校を調べたほうがいいかもしれないですね。開成は岸田さんのイメージがついちゃいましたよね。増税するの!?みたいな。
おおた:ついでに言っとくと、男子校のほうが東大をはじめとする難関大学に入りやすいというのも錯覚で、そもそも東大は女子が2割しかいません。女子に高学歴は必要ないというジェンダー・バイアスがその一因です。しかも女子校は男子校の3倍もある。だから優秀層がばらけてしまって、1校当たりの大学進学実績は少なく見える。
逆にいうと、男子は限られた数の学校に優秀な生徒が集中し、しかも男の子なら少しでも偏差値の高い大学を目指せというジェンダー・バイアスが働いて、進学実績が高く見える。結果としていくつかの超進学校ができあがるわけです。
大学名や会社名でモテたって何にもならない
凹沢:筑駒の水田委員(同校では水田稲作学習がカリキュラムに組み込まれている)のみなさんに取材したときに、彼らが印象的なことを言っていました。「神童みたいな子ばっかり集まっているんでしょ?」と聞いたら、「この学校に入ると、上には上がいることを実感できて、一度はみんな挫折するから、みんな優しい」って言ったんです。
辛酸:優しいんだ。
おおた:それを挫折と呼ぶかどうかは微妙ですが、小学校では秀才扱いされて、常に優等生という役割を担わされていた子どもたちが、筑駒では「凡人」でいられるわけですからね。それは心地いいと思う。