「株価が高いから」と投資しなければ好機を逃す訳 大相場が始まってしまえば大底狙いは無理
景気が循環していることは19世紀末以降、次の経済学者によって指摘されました。
・10年サイクル…フランスの経済学者クレマン・ジュグラー
・20年サイクル…アメリカの経済学者サイモン・クズネッツ
・50年サイクル…旧ソ連の経済学者ニコライ・コンドラチェフ
の4人です。彼らの提唱した異なる景気循環のプロセスを複合的にとらえたのが、オーストリア・ハンガリー帝国生まれの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターです。20世紀前半を代表する経済学者である彼は、ハーバード大学の招聘によりアメリカに渡った際、これらの景気サイクルを『景気循環論』という大著にまとめたのです。それぞれのサイクルには、最初にそのサイクルを指摘・提唱した経済学者の名前が冠されました。
では、それぞれの景気サイクルについてご説明しましょう。
4つの経済サイクル
①キチンサイクル
いちばん小さなサイクルはキチンサイクルと呼ばれるもので、その期間は4年弱です。他の景気循環と比べてサイクルが短いことから、「短期循環」や「在庫循環」などとも呼ばれています。おそらく、私たち一般消費者の肌感覚として、いちばんしっくりくる景気サイクルなのではないでしょうか。
なぜ在庫循環と呼ばれるかというと、キチンサイクルは企業による在庫への投資と関わっているからです。企業は在庫の残高を調整しています。自社が適正と考える在庫残高を下回ると在庫の数を増やし、上回ると在庫の数を減らします。このような在庫の増減は、取引先企業にも影響を及ぼすため、経済全体の拡大や縮小につながります。
こうした在庫の増減により、4年弱の周期でキチンサイクルが循環するというわけです。
②ジュグラーサイクル
キチンサイクルの周期が4年弱であったのに対し、ジュグラーサイクルの循環周期は約10年です。一般にジュグラーサイクルは、企業の設備投資に起因すると考えられています。設備は10年もすれば古くなるので、そこで新旧設備の交換が行われる際、関連企業を巻き込んで景気の波を作り出すというのがその理由です。ジュグラーサイクルの中には、通常、キチンサイクルが2つか3つ含まれるとされています。