――再編は一段落付いた中で、グループの競争力強化という目標に対しては?
まだまだ。ドコモは2021年に新料金プラン「ahamo(アハモ)」を出してから、かなりシェアを戻してきたが、まだその途上。時折、(契約純増数で)2番手にはなるが、やっぱり3番手のポジションからは変わっていない。競合の各社さん、強いですよ。
NTTデータにはグローバル事業を寄せたので(編集部注:2022年10月にNTT傘下の海外事業部門をデータの子会社とする再編を実施)、これから利益が上がる構造に持っていけたらいい。
また、IOWNの製品・サービスが今後数年でどんどん出てくる予定だが、光ファイバーについて東西がメインで提供する以外は、どこのグループ会社がどう手がけていくのかは全然決まっていない。
これからやるべきことが沢山ある。楽しいくらいの(大きく伸びる)チャンスだ。
――NTTは今後、IOWN構想の中で「光電融合デバイス」や「光半導体」といったハードウェア製造にも取り組んでいく方針です。通信会社の色合いはどんどん薄まりそうですが、澤田さんが描く将来のNTT像を一言で表すと?
通信は国民最後のライフラインなので、シェアナンバーワンの当社が引き続き支えるのは変わらない。だが、2030年、2040年を念頭に置くと、NTTはかなりグローバルなコングロマリット(複合企業体)になっているはずだ。
現時点ですでに、全社売上高に占める固定通信、移動通信の比率は半分程度しかない。この比率はますます下がっていく可能性が高いだろう。
将来のNTTはもっと多面性が深まり、携帯会社や地域通信会社、SIer、メーカーなどさまざまな顔を持つことになる。自動車の製造だって視野に入る。自動車ってスマホと同じ端末でしょ。こうなってくれば、ますますNTT法が対処する領域ではない。
産業のイニシアティブを取りたい
――澤田さんは過去、GAFAMなどアメリカのビックテックへの対抗をことあるごとに口にしてきました。一方で、NTT法をめぐる議論の中で競合からは「NTT法を廃止して縛りをなくしても、NTTはGAFAMにはなれない」と揶揄する声もあります。
GAFAMと言っても、いろんな業態がある。例えば、アップルのようにアイフォンならぬ「エヌフォン」をNTTが作るかといえば、そんなことは誰も考えていない。検索エンジンを作るかというと、それも同じ話。GAFAMと対抗するというのは、決してそういう同じ業態をやることを意味しているんじゃない。
前々から言っていたのは、GAFAMが通信の領域へ展開しつつあることだ。例えば、アメリカの通信会社のAT&Tが2021年、マイクロソフトへ通信のコアネットワーク売却を発表した。ほかにも、データセンターや海底ケーブルなどの領域で同じことが起きている。
技術で勝たないと、AT&Tのようになってしまう。大事なのは、産業のイニシアティブを取れるかどうか。そこで出てくるのがIOWNだ。IOWNや光電融合は、ゲームチェンジを起こせる。
(GAFAMなどが作った)サーバーやデータセンター、クラウドもすべて、能力の高いデバイスなどが登場したら、それに合わせて彼らも一から製品やサービスの作り直しを余儀なくされる。それを狙っている。
――NTT法が廃止されれば、所管官庁である総務省との距離が遠くなりそうです。今後は半導体関連を所管する経済産業省などとの連携がポイントになるのでしょうか。
偉そうなことを言うと、経産省以外にも外務省や農林水産省など、いろんなところの支援がほしい。
今後あらゆる領域でICT化が進み、それをNTTが手がけることになる。NTT法が廃止されれば支援の出し手・受け手ともにマインドセットが変わり、支援を得られやすくなるはずだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら