――自民党の提言には、澤田さんやNTT側の意向も反映されたのでは。2025年をメドに法廃止という流れには、性急すぎるという声も多く聞かれます。
いやいや。社長時代にも「法律を直してくれ」といった要望を誰かに言ったことは一度もないし、今回の一件はわれわれから仕掛けたものではない。
自民党側に「NTTをフリーにさせるべき」という意識があるのは確かだ。それは(NTTのビジネスモデルが)固定電話を超えていくから。NTT法の廃止によって、NTTに対する意識面でのバイアスが取り除かれ、変革のトリガーになると期待している。
私は会長になって以降、経団連副会長などの立場で財界活動にも力を入れている。マクロでは、日本の産業競争力をきっちりつけて持続的に発展させ、国民生活を良くしたいという思いが大きい。(それに資する形で)NTTの会長としては、(2030年ごろの商用化を見据えた、NTTの光技術を使った新たな通信規格である)IOWN構想を将来的に、日本社会にインフラとして受容してもらえるようにしたいと思っている。
そもそも自民党のプロジェクトチームの座長を務める甘利明議員は、昔から「NTT法はいらんでしょ」派。彼はIOWN構想をすごくプッシュしてくれている。だから、その実現のために障害はすべてなくすべきという考えだ。
ただ、本音を言えば、政府には株をあまり売ってほしくない。(経営サイドからすると)安定的な株主がほしいからだ。
2025年という時期については、やっぱり早くしたかったのではないか。時代の変化が早いうえに、安全保障環境も悠長に見ていられない。そういう意識が自民党の先生方にはあったのかもしれない。
いつまで「蟻と象」のように言うのか
――時代に合わせた法改正は必要です。ただ、競合キャリアはNTT法の廃止により、NTT東日本・西日本(以下、東西)とNTTドコモの合併が進むことなどを懸念しているようです。
公正競争は電気通信事業法で規制されているので、併せてそちらを強化してもらえばいい。(NTT法廃止に)反対するのは、「今を守りたい」という考え方だ。
東西とドコモの合併はありえない。固定電話や光ファイバーを全国に提供する東西は、日本のインフラ全体を考えるのがミッション。一方、ドコモのミッションは国内の競争で勝ったうえで、世界市場にも参入していくこと。違う目的の会社を合併させる必然性がない。
――KDDIの高橋誠社長は「巨大NTTの回帰につながりかねない」と言及しています。
KDDIとソフトバンクの国内の売上高を知っていますか?それぞれ約6兆円ですよ。NTTは国内で約11兆円。
もう十分、うちと拮抗する大会社になっている。いったいいつまで蟻と象のように言っているのか。むちゃくちゃ大きい会社さんなので、そこは(大会社としての責務を)背負って頑張ってもらいたい。
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