――澤田さんは2018年の社長就任以降、TOB(株式公開買い付け)によるドコモとNTT都市開発の完全子会社化や、グループの海外事業再編などに矢継ぎ早に取り組んできました。まだ再編の余地はあるのでしょうか。
今後のグループ再編については現社長の島田(明)さんのエリアだが、基本的には終わっている。私が社長時代にやった再編は、あくまでもグループを強くすることが目的だった。
ドコモの場合、収益・利益が大手キャリアの中で3番手になっていた。競合他社との対比では、固定通信のサービスを持っておらず、法人向けの事業が弱かった。
そのため完全子会社化後に、長距離通信を手がけるNTTコミュニケーションズをドコモの傘下にした。それによってコスト効率も上がった。再編で弱点を補強するという、いたって普通の事業戦略を実行しただけだ。
なお、東西の合併については公正競争上の問題がなければ、論理的にはありえる。両社ともミッションが同じだからだ。キャリア各社は東西の光ファイバー網を使っている。彼らからみても、合併によって経営の効率性が上がることでコストが下がったほうがいいはずだ。
ドコモTOBは「だまし討ち」ではない
――これまでの再編に当たっては、NTT法が足かせになっていた部分も大きいはずです。
それはそのとおりだ。ただ、社長在任当時は「NTT法を直してくれ」と求めるよりも、法律に触れない範囲でやれることからやろうと動いた。
ドコモのTOBをやったときは、競合から「だまし討ちや」と言われたが、それは変な話だ。インサイダーになるから事前に誰にも言えないし、ぎりぎりになって総務省へ話を持って行き、法的におかしくないという意見をもらってからTOBをスタートした。
意見を言うのは自由だが、ファクトに基づいて話してもらいたい。われわれが過去に「やらない」と言っていたことを撤回して、だまし討ちしたわけではない。
一方で、NTT法の廃止によって「あなたは電話会社でしょ」と言われなくなれば、(グループ強化に向けて)より柔軟なマインドセットを持てるようになる。研究成果の開示義務がなくなる点も大きいだろう。
――研究成果の開示義務は、具体的にどんな支障を来していたのでしょうか。
マイクロソフトやインテルなどの海外企業と提携してきたが、NTT法の規定があると伝えると、みんなびっくりする。「え?何かの時に国が出てくるのか」と。
グローバルビジネスを自由に展開するうえで、相手の心理面を含めてブレーキになってしまっている。「NTTと組んだらオープンにしないといけないの」という議論になって、実際に組んでくれないとか、なかなか提携が進まないといったこともある。
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