「LGBTQ+」の人が職場で直面するさまざまな課題 自分らしくいられる環境を企業はどう作るか
さらに、性自認や性的指向が決められない、あるいは迷っているクエスチョニング(Questioning)、誰に対しても性的欲求を持たないアセクシュアル(Asexual)、自分の性が男女の枠にとらわれないと自認しているXジェンダー(X-Gender)等、LGBT以外の性的少数者が存在するため、最近ではこれらの性的少数者を示す言葉としてのクイア(Queer)の文字を加えて、LGBTQあるいはLGBTQ+といった表記が用いられることが増えてきています。
また、近年では「SOGI(ソジ)」という言葉が主流になりつつあります。性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)の略で、性に関する属性のすべてを包括し、誰もが当事者となる概念です。
LGBT理解増進法の課題点
LGBT理解増進法の施行に伴い、一部メディアでは、トイレや公衆浴場の問題にまで派生させ、トランスジェンダーと性犯罪とを結び付けた報道がなされました。
また、「すべての国民が安心して生活できることとなるよう、留意する」と、あたかもLGBTQ+の当事者が社会を脅かすかのようにも捉えられる文言が、法律制定の直前で追加されるという異例の経緯もありました。
今後、社会全体で活発に議論を重ね、コンセンサスが形成されていくことが望まれます。
LGBTQ+にまつわる労務管理に関わってくるトラブルには、次のようなものがあります。
(1)同性婚訴訟……日本国内において、同性間の婚姻を法律上認めていないことが憲法違反であるとして、国に対して損害賠償を求めている訴訟
2023年8月現在、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5つの地方裁判所で判決が言い渡され、大阪を除く4か所で、違憲(違憲状態を含む)とされる歴史的判断がなされました。
(2)経産省トイレ利用制限訴訟(2023年7月11日最高裁判決)……経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判
トイレの使用制限を設けた国の対応は違法とし、原告が勝訴した訴訟です。裁判官は判決のなかで、「個々の事情に応じた対応が必要であり、そのうえで、感覚的かつ抽象的な懸念ではなく、真摯に調整を尽くすべき事案である」と指摘しています。