ただ、この運営方針会議をめぐっては多くの国立大学関係者らが反対し、物議を醸していた。
従来は、学長が中心となって決めてきた国立大学の意思決定を、学長と学外の有識者を想定する3人以上の委員で構成される運営方針会議が担うと定めている。この委員の任命には文部科学大臣の承認が必要なため、「政府介入が強まる」「大学の自治を脅かす」という懸念や批判が噴出している。
当初、運営方針会議は「国際卓越研究大学」に選ばれた国立大学法人だけが対象になるはずだった。国際卓越研究大学は、政府が設立した10兆円規模の大学ファンドから毎年、百億円~数百億円程度の助成を受けられる。そのため、運営方針会議の設置によるガバナンスの強化をセットにする、という理屈だ。
ところが、文科省は10月下旬に突如として、一定規模以上の国立大学も設置義務の対象に入れる改正法案を公表した。
結論ありきの「後出し」はだめ
改正法の中身の是非はともかく、立法事実を示す公文書が作成されずに改正法が成立してしまったこと自体が、大きな批判を呼んでいる。
何がどう問題なのか。
今回のケースで言えば、運営方針会議の設置対象を拡大する必要性は何で、それがどういう理由で、どこから出てきたものなのか――そうした立法の根拠たる事実を示せることが、立法の合理性を担保する。
立法の出発点である原案作成において、立法事実は土台になるものだ。原案作成の前に、まずは立法事実をよく調査し、検討すること。この順番が非常に大切である。
なぜならば、仮にもし、先に原案を固めてから、その原案に必要な材料を集めて立法事実とする順番であれば、それはもう「結論ありきの後出し」でしかないからだ。そのようなやり方では恣意的な立法になりかねないし、原案に都合の良い事実が意図的に集められる恐れもある。
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