「だんご3兄弟」を聞いた9歳の私が衝撃を受けた訳 Aマッソ加納愛子さんがハマった「串にささって」
まさかあの日が、そんな心も体も寒い冬の出来事だったなんて。それぞれの情景が頭の中でつながらなくて、とても不思議な感じがする。
22年前のあの日、私はテレビの前で小さな体を硬直させて、あまりの衝撃に耐えていた。
初めて味わう感覚だった。突然流れてきたタンゴ調の曲とチープなアニメーション。そこに、慣れ親しんだけんたろうお兄さんとあゆみお姉さんの歌声。な、なに? なにこの曲? 私と親父は話すのをやめて画面に釘付けになった。曲が終わると、父娘は自然と顔を見合わせた。親父はニヤニヤ笑って「ええやん」と言った。
それは島田紳助の「ステキやん」のような深みを強調するトーンではなく、おかんが髪の毛を切って帰ってきたときに一応言ってあげる「似合ってるやん」のような、ライトで親しげなトーンだった。私は「なに今の、もっかい聴きたい!」と興奮したが、どうすることもできなかった。いてもたってもいられなくなり、立ち上がって家の中をウロウロした。
今の時代なら携帯ですぐに検索して、知りたいという欲求を指先で解消できるが、当時はそうもいかない。なにか特別なものを見たような気がしたのに、時間が経つとどんどん記憶が曖昧になっていく。なんとしてでももう一度聴きたい。もう一度、あの3人を見たい。
それが、私と「だんご3兄弟」との出会いだった。
社会現象となった「だんご3兄弟」
しかしその焦がれるような思いは、その後すぐにあっけなく叶えられた。猛烈に欲した「だんご3兄弟」はその年に社会現象を巻き起こし、1年中あらゆるところでこれでもかというほど耳にすることになる。
私が観たのはNHKの「おかあさんといっしょ」という番組で、1月の「今月の歌」としてオンエアされていたようだった。「だんご3兄弟」は放送されるやいなや、NHKに問い合わせの電話が殺到したらしい。私と同じように、日本中の親子がテレビの前で「え! なに今の!」と思ったということになる。
大人の「売れる前から知っていた」は、自慢話のスタンダードだろう。その一言で、自分が他者に比べていかにその分野にアンテナを張っているかを誇示することができる。その自慢はまわりの人間にとっては興味のない話であることが多いが、それでも我慢できずに話してしまうのが人間の性だ。
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