岸田首相、安倍派一掃でも変えられない派閥政治 「死人に口なし」で捜査の標的は歴代事務総長に

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こうした安倍派をめぐる複雑怪奇な蠢きをさらに加速させたのが同派の宮沢博行前防衛副大臣。同氏は副大臣在任中の13日、東京地検が裏金疑惑の“核心”として捜査している販売ノルマの超過分に対するキックバック(資金還流)について「(政治資金収支報告書へ)記載しないでよいと派閥から指示があった」と明言、同派所属議員として初めて安倍派の組織的裏金作りへの指示を認めたからだ。

宮沢氏は同日、国会内でわざわざ記者団の取材に応じたもので、その中で「長年やってきているので適法と推測し、指示に従った」と釈明。指示した人物の特定は避けたうえで「(主な使途は)政治活動としての交際費」と説明する一方、「黙っていろと言われたが、早く潔白を説明したいと多くの議員が思っている」と箝口令を敷く同派幹部の姿勢を批判した。

安倍派混乱を拡大させた宮沢氏の「暴露」

さらに宮沢氏は14日に副大臣の辞表を提出した後メディアのインタビューに対し「(キックバックは)3年間で140万円」「派閥の方から『しゃべるな、しゃべるな』といわれた」「(発言したことに)悔いはない」などと同派一掃への憤懣もぶちまけた。

こうした安倍派の混乱が拡大する中、14日に公表された時事通信の12月世論調査(8~11日実施)では、内閣支持率が17.1%まで下落、18.3%とこちらも下落した自民党支持率との合計は約35ポイントと「まさに政権維持の危険水域」となった。今後の各メディアの調査での支持率下落は必至とみられる。

そうした状況にもかかわらず、15日午前の交代人事後の初閣議では、岸田首相の笑顔と明るさがひときわ目立っていた。これについて、与党内からは「目の上のたんこぶだった安倍派の一掃と抑え込みに成功したことへの達成感」(自民長老)との皮肉な見方も出るが、「テレビ画面でこの様子を見た国民は、ますます政権批判を強める」(閣僚経験者)ことは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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