際立つ「勇者ヨシヒコ」シリーズ俳優活躍の背景 ムロツヨシ、木南晴夏が今期連ドラに主演

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突如空中に巨大な姿を現し、旅のお告げを伝える仏役の佐藤二朗も、このドラマで知名度を上げたひとりだろう。

仏のはずなのに、お告げの内容はかなり適当でヨシヒコたちにも信用されていない。それでもまったくめげる様子もなく早口かつアドリブでまくしたてるので、しまいにはウザがられてしまう。さらに不倫していたことがバレてしまうなど一見散々な役柄だが、逆にそこがクセになる部分もあって爪痕を残した。

そして夫婦漫才のような丁々発止の掛け合いを繰り広げたのが、ムロツヨシ演じるメレブと木南晴夏演じるムラサキである。

メレブが使う魔法は、相手の着ている服を臭くする「ナマガワー」などほとんどが戦闘の役に立たない。そしてその実験台にされることが多いのがムラサキである。彼女にとってはいい迷惑なので、メレブに対しては自然に当たりが強くなる。メレブも黙ってはおらず、なにかと口撃する。そこで掛け合いが生まれるわけである。

たとえば、ムラサキは貧乳がコンプレックスという設定。それをメレブが「ムネタイラさん」などとネタにする。するとムラサキはすかさずキレながらツッコむ。

コンプライアンスへの意識が高まった現在だともはや難しいネタかもしれないが、当時は深夜の放送でもあり、かなり自由にできたところがあった。結局こうした突き抜けたコメディ路線がひとつの原動力になり、テレビ東京は深夜ドラマの一時代を築くことになる。

「真顔」の演技のDNA

演出もあってのことだろうが、『勇者ヨシヒコ』シリーズのヨシヒコをはじめとした面々には、共通して「真顔」の面白さがある。真面目な顔でとんでもないことを言ったり、冷静にツッコんだり、毒舌になったり。

体の動きも大げさにするとか、いかにもコミカルにギャグっぽく振る舞うわけでもない。だがだからこそ面白い。いわば全員が、「真顔」の演技の達人である。

作風は異なるが、『うちの弁護士は手がかかる』のムロツヨシの演技にも、また『セクシー田中さん』の木南晴夏の演技にも、「真顔」の表現力がより豊かになっているのが感じられる。『勇者ヨシヒコ』シリーズのDNAは健在だ。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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