《日本激震!私の提言》財政運営全体を考える中で復興財源の議論をすべき--岩本康志・東京大学大学院教授

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《日本激震!私の提言》財政運営全体を考える中で復興財源の議論をすべき--岩本康志・東京大学大学院教授

--復興のための資金調達をどのように考えたらよいか。

東日本大震災の復興財源だけを抜き出して議論するのか、財政運営全体を見てその中で議論するのかで、考え方がだいぶ違う。

復興財源だけを考えると、まれな出来事に対応する大規模な財政支出については、通常は課税平準化の考え方から、まず国債を発行して調達し、長期間にわたって税で償還していくことが望ましい。当初は震災の混乱があるから、税による償還は数年間遅れて始まることになる。

政府では財源として消費税が検討されているようだが、それには問題がある。消費税増税分を、当面は復興目的に使い、その後は社会保障目的に移行することになれば、震災を口実に消費税増税を行うことになり、それを見透かした反発が起こるだろう。また、消費税増税は被災した人々にも負担が及び、復興財源と位置づけるのが難しい。被災者への還付は技術的に困難だ。

社会保障費増加のほうが震災経費よりも影響大

重要な視点は、将来の社会保障支出増大のほうが、震災復興経費よりもはるかにインパクトは大きいということだ。現状では、将来の支出増にも備えずに、逆に負担をどんどん先送りしており、平準化と逆行している。復興財源だけの平準化を議論してもあまり意味がない。社会保障費は約50年後にはGDP(国内総生産)比で4%程度にまで増えていくと予測される。東日本大震災に対応するための支出を仮に20兆円程度とすれば、社会保障費の増加は、2年に一度、大震災が起きているような規模だ。したがって、社会保障費の負担を長期で平準化することにしっかり取り組んだほうがよい。

--復興財源の償還を考えるより、社会保障を目的とした消費税率の引き上げのほうを先に実施すべきということか。

震災前は、リーマンショックからの景気の回復が順調なら、早ければ2012年秋の増税もありうると考えていた。しかし、震災で将来が不透明になってきたので、消費税率引き上げの時期は後にずれているとみられる。

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