カドカワ本発売中止も…LGBTQ炎上論争の現在地 2023年の議論から展望する、日本の性的マイノリティ受容性

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性的マイノリティーに対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」が、2023年6月16日に国会で成立、23日に施行されたが、その辺から論調に変化が見られはじめた。「性的マイノリティーの権利を守る」という視点から、本法案に関して不備を指摘する声も出ていた一方で、「ジェンダーの多様性をどこまで社会として容認すべきか?」という議論も顕在化しはじめた。

8月の「ジェンダーレストイレ」の廃止が象徴的だった。このトイレは、新宿の高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」で、多様性を認める街づくりの象徴として設置されたものだが、「性犯罪の温床になる」「(主に女性が)安心して使えない」といった批判が巻き起こり、設置して4カ月で廃止、男女別トイレと多目的トイレに変えられた。

続く11月には、三重県の温泉施設で、女性用の風呂に侵入した疑いで男性が逮捕されたが、男性は「心は女なのになぜ女子風呂に入ったらいけないのか」と発言して自身の行為を正当化した。本件に関しては、逮捕された男性に対する擁護意見は少なく、女性の権利が侵害されること、社会秩序を壊すことを懸念する意見が多く寄せられていた。

広告の世界でもさまざまな議論に

広告の世界でも、ジェンダー多様性に関する議論が起こっている。

リクルートが運営する結婚情報サービス「ゼクシィ」は12月1日、JR渋谷駅近くで同性カップルや事実婚のカップルを起用した広告を掲出した。

筆者もこの広告を現地で見たが、若者が多く、多種多様な人々が集まる渋谷の街にふさわしい広告で、その場によくなじんでいるように見られた。

しかしながら、本件がニュースで報道された際には、ネット上は賛否両論の議論が起こっていた。ただし、本広告に批判的な意見の多くは、LGBTQの存在を否定するものではない。目立ったのは、「性的指向は個人の問題であって、あえてマイノリティーの存在を強調する必要はないのではないか?」「トレンドに便乗しているだけではないのか?」といった意見だ。

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