スイスの高級時計、「輝かしい」ブームにお別れ 高額出費をいとわなかった消費者心理に変化
LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンからグッチのオーナー、ケリングに至るまで、高級品メーカーはインフレとリセッション(景気後退)懸念で売り上げが落ち込んでいる。こうした状況が続けば、価格決定力が損なわれ、マージンや利益に下向きの圧力がかかるだろう。
カルティエを所有するフィナンシエール・リシュモンが11月に発表した半期決算では、時計販売が3%減少し、米州では17%も落ち込んだ。同社は「ヴァシュロン・コンスタンタン」などハイエンド時計ブランドを傘下に置いている。
HSBCのアナリストは先月、残念ながら「高級品はリセッションの影響を受けないわけではない」と指摘。パンデミック後の「輝かしい成長」とはお別れだと警告した。
流通市場の状況
スイスの時計輸出は7月、過去2年余りで初めて減少に転じ、ここ数カ月の平均伸び率は上期のペースを大きく下回っている。
中古時計に関しては、1年余り値下がりが続いている。ブルームバーグ・サブダイヤル・ウオッチ指数は最も取引額の多い50モデルを追跡しているが、価格は22年4月のピークから約42%下げている。
20年序盤のパンデミック発生を受け、生産施設はコロナ対策のロックダウン(都市封鎖)対応するため閉鎖された。小売店ではシャッターが下ろされ、対面販売を停止。クオーツ腕時計の登場に伴い1970年代や80年代に起きたいわゆる「クオーツクライシス」と似たような危機に陥るとの懸念もあった。