熊本菊陽町、経済効果6.8兆円で激変の飛躍と懸念 地価高騰も、人口急増でインフラがパンク

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「黒船TSMC」の進出で交通インフラの整備も計画され、菊陽町周辺エリアは大変貌を遂げようとしている。肥後銀行を傘下に持つ九州フィナンシャルグループは8月末、「電子デバイス関連産業集積に伴う地域経済への波及効果の見直しについて」というリリースを発表。その中で、2022年からの10年間で進出企業数は90社、関連産業を含む雇用は1万0700人となり、電子デバイス関連産業集積に伴う10年間の経済波及効果は6兆8518億円になるとしている(TSMC第2工場は未考慮)。黒船効果は絶大だ。

まさにバラ色の未来が展望されているのだが、現実はいいことばかりではない。一帯がシリコンアイランド化していく中で、さまざまな課題や懸念材料が指摘されている。すでに始まっている工場周辺での交通渋滞に加え、工場・住宅用地争奪戦、水資源への影響、教育・子育てインフラ整備など受け入れ態勢の問題だ。

畜産農家が土地を借りられない事態に

菊陽町や周辺自治体は原則用途が農業に制限される「農業振興地域」となっているため、工場建設のための土地や住宅建設のための土地は限られていて、激しい争奪戦が繰り広げられてきた。そうした中で、将来的な転用を見越して農家に売却を持ち掛け、農地を取得する動きが増えている。後継者がいない農家が農地を手放すケースもあるが、問題になっているのは飼料作り用に土地を借りている畜産農家への影響だ。

JA菊池(菊池市、合志市、大津町、菊陽町)の2022年度の生乳生産量は約8万6000トンで西日本一。生乳販売額は97.8億円に上る。畜産農家の多くは輸入飼料の高騰もあり、飼料にするとうもろこしを自らの土地とほかから借りた土地で作っている。

ところが、TSMC進出以降、借りていた土地の返却を求められるケースが増えているという。工場用地などに転用するためだ。代わりの土地を見つけなければ飼料を作れないから畜産農家にとっては死活問題である。

「工場や倉庫用の土地、そして高速道路の整備に伴う需要もあるため農地の価格が驚くほど跳ね上がり、どんどん売却されています。ある工場建設予定地の周辺では、3年後には25町(7万5000坪)の農地がなくなります。酪農家は農地を借りて牛のえさとなるコーンを年2回収穫してきましたが、それができなくなってしまう。今の状況はまだ手始めで、売却も貸しはがしも今後もっと加速していくと危惧しています」(地元の農業関係者)

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