「アフリカに服送るな」怒る男に学んだお金の本質 アパレルブランド「CLOUDY」代表に教わったこと

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さて、ここからが本題だ。このアフリカの話には、今の日本が学ぶべきことが詰まっている。

日本に住む僕たちが「生活が豊かになる」と聞いて想像するのは、賃金がどれだけ上がったかという話。たしかに失われた30年の間に名目賃金はほとんど上がっていないが、生活は格段に便利になっている。30年前のようにわざわざレンタルビデオショップに行かなくても、iPhoneでNetflixを見ればいい。

日本の問題は「自走」できなくなっていること

問題は、生活が豊かになっていないことではなく、「自走」できなくなっていることだ。iPhoneやNetflixなど生活の質を高めている商品やサービスは海外に頼っているものが多い。食料自給率やエネルギー自給率も下がっている。

リカードが「比較優位」を唱えているように、自国の得意分野の生産に特化し、そうでないものは他国にたよって自由貿易をすることには異論はない。しかし、30年前と比べると日本の得意分野は激減し、貿易赤字国に転落している。もう「自走」できなくなっているのだ。

それを補うために、投資を頑張ろうとしているのが今の日本だ。ここで、投資がうまくいくためには、2種類の人が必要だ。1人はお金を投資する人。もう1人はお金を投資してもらって、新しい商品やサービスを作ろうとする人

お金だけ投資しても、自走するはずがない。新しい商品やサービスを作ろうとする人が国内に増えなければ、投資されたお金は行き場を失い、海外に流れるしかない。海外で開発された物に頼り続ける未来が待っている。

来年、NISAが拡充される。投資熱が高まりそうだが、お金を出す人しかいなければ「自走」と真逆の方向へと進んでいく。その投資は完全に「他力本願」なものになる。銅冶さんはアフリカの人たちと協力して、自力でアフリカが走っていけるように全力を尽くしている。

現在の日本に必要なのは、他力本願に投資する人を増やすことではない。「必ず6を出します」と自力で問題を解決しようとする人(お金を投資してもらって、新しい商品やサービスを作ろうとする人)を増やすことだ。

資産運用立国を目指す日本だが、資産運用で1億2000万人もの人口を支えられるはずがない。投資をする前に、小説の中の堂本の声に耳を傾けてみてほしい。

自分たちが生産できるようにならなければ、持続可能な成長ができるはずがないのだ。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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