「アフリカに服送るな」怒る男に学んだお金の本質 アパレルブランド「CLOUDY」代表に教わったこと

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「違うんすよ。彼らに寄付をするのは、逆にアフリカの発展をさまたげるんすよ」
堂本は切実な表情で、現地のことを詳しく教えてくれた。
「世界中から服が送られてくるせいで、特に西アフリカには高いお金を払って服を買う人がほとんどいません。現地で服を作っても売れないから、産業が発展しないんすよ。だから、アフリカで作った服を、日本に持って来て売っているんすよ」
熱心に耳を傾ける七海が、「なるほど」とあいづちを打つ。
「明治の近代化と同じことをされようとしているんですね。黒船が来航してから、日本が急速に成長したのも、繊維産業からでしたよね」
「そうなんすよ。それに、アフリカの文化とか伝統には本当に魅力を感じています。僕はそれを日本で伝えたいんすよ」
『きみのお金は誰のため』122ページより

支援の目的は「自走」できるようになること

彼は7年間、ゴールドマン・サックス証券で働いたのち、2015年アパレルブランドCLOUDYを立ち上げる。主にアフリカのガーナを支援しているが、お金や物資を支援するだけでなく、彼らが「自走」できるように支援しているのだ。自走とは、外部支援に頼らず発展していけること。

小説の中の堂本も同じように話している。

堂本はアフリカと日本に拠点を持って活動しているそうだ。アフリカの工場では、現地の人たちに織り機やミシンの使い方を覚えてもらって、シャツやパンツを自分たちで作れるように導いている。
一方、日本では、作ったシャツやパンツを取り扱うお店を増やしたり、ネット通販で注文したお客さんにこの部屋から直接送るなどしていると話してくれた。
七海がしきりに感心している。
「私たちがアフリカに寄付するだけでは、長期的な解決にはならないんですね。それよりも、彼ら自身が生産できるようになれば、より持続的な未来につながっていきますよね」
『きみのお金は誰のため』123ページより

必要なものが自分たちで作れるようになれば、その社会は自走できる。インフラが整い、彼らの持つ技術が発達すれば、自分たちでいろんな問題を解決できるようになる。便利な物やサービスも、自分たちが利用するものは、自分たちで作れるようになる。これが、「生活が豊かになる」ということである。

銅冶氏らの支援で運営されている学校で行われた「騎馬戦」の様子(画像提供:銅冶勇人氏)
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