「割安TOB」実施企業が村上ファンドに狙われた訳 アクティビストの襲来でTOB不成立の懸念も

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株価が1株当たり純資産の何倍かを測るPBR。1倍を割る水準でTOBが実施されると、株主は買収対象となった企業の資産価値よりも、安い価格で株式を手放すことを迫られる。このような「割安TOB」に渦巻く株主の不満を突いたのがシティだ。

シティの参戦によってTOBを狂わされた企業は、ほかにもある。静岡県の調味料メーカー、焼津水産化学工業だ。

投資ファンドが8月からTOBを実施していたが、PBR0.7倍という割安な価格にシティを含む複数のアクティビストが目をつけ、焼津株を買い増した。株価がTOB価格を突破して推移した結果、応募が集まらず、不成立に追い込まれている(詳細は10月17日配信記事:村上系ファンドの餌食に、静岡・老舗企業の盲点)。

大株主の「変心」が痛手

寺岡製作所の場合は、大株主の「変心」も痛手となりそうだ。

寺岡製作所へのTOBは、成立する公算が高いと見られていた。筆頭株主の伊藤忠商事や創業家がTOBに同意しており、議決権ベースで3割以上の賛成を確保できていた。金融機関や取引先企業、持ち株会といった「会社寄り」の大株主も多く、買い付け予定数の下限である約61%の達成は決して困難ではないと見られていた。

ところが、シティは11月15日に発行済み株式数の1.54%にあたる41万株を市場外で取得した。一部の大株主がTOBに応募する代わりに、TOB価格よりも7円高い1株571円でシティに持ち株を売却したようだ。TOB応募時と比べて、売り主は単純計算で287万円の売却益を多く手にしたことになる。

寺岡製作所の株価は12月に入っても600円台で推移しており、株主にとってはTOBに応募するよりも市場で持ち株を売却したほうが得をする。期限である12月13日までに応募が集まらなければ、買収者である創業家が買い付け価格を引き上げるか、TOBを断念して経営陣がシティと対話するかの険しい選択を迫られる。

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