「11歳年下の夫」と月10万円で暮らす彼女の人生 旅行先で出会ったトルコ人と結婚した彼女の選択

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ただし、出会ってから結婚に至るまでは日本とトルコの遠距離恋愛が7年間も続いた。双方の家族に相手を紹介することにためらいがあったのだ。美紀子さんはそもそも結婚願望が薄かったと振り返る。

「小学校時代から音楽大学の付属校に通い、音楽一筋な先生方から『恋愛や結婚よりも練習!』と言われながら育ちました。私自身も専門性やキャリアを追求した人生を送ることが望みで、遅ればせながらパリに留学したのも『ヨーロッパ発の音楽に取り組んでいるのだから、その精神的な土壌も含めて学んでスキルアップしたい』という思いが強かったからです。ピアノ教室の講師をして貯めたお金で渡仏しました。当初は2年計画でしたが、フランスは音楽を学ぶ者へのサポートが厚いので4年間も学ぶことができました」

ハリルさんは話しかけてきた商人の中の一人だった

暗黙の了解で恋愛が禁止されていた日本の音楽大学とは異なり、フランスの音楽学校は「音楽は人生そのもの。恋愛を含めてすべて知らなければ表現できない」という考え方。影響を受けた美紀子さんも留学生仲間かつ音楽家仲間の男性と3年間ほど交際した。

「音楽に関しては高め合えるような関係でした。でも、結婚の話は出ませんでしたね。音楽家同士だと視野が狭くなるとお互いに感じていたのかもしれません」

そして、トルコ旅行中にイスタンブールのバザールでハリルさんと出会う。英語や片言の日本語を使って美紀子さんに話しかけてきた多くの商人の中の一人だという。

「最初から彼はちょっと違うな、モノを見る力と売るセンスがある、と思いました。私の好みに合わせて、ポイントをずらしていない商品を英語で提案してきたからです。彼のほうも音楽家である私に興味を持ったようで、連絡先を交換。4カ月後に再びトルコを訪れたら、彼は仕事を休んで友人として旅行をアレンジしてくれました。それでいい感じになり、お付き合いするように。私は日本に戻っていたので、直接会えるのは年に3回ぐらいでしたね。タイなどの第三国で落ち合うこともありました」

ハリルさんはイスタンブール出身ではない。隣国との国境近くにある田舎町出身で、畑作や牧畜を営む一族は結びつきが強く、日本人どころかクルド系ではないトルコ人すらもコミュニティ内には入りづらいという。

「いとこ同士の結婚も普通にあり、昔ながらの家父長制です。女の人が町の外に出ることは少ないので、彼のお母さんはトルコ語を話せません。その必要もないのでしょう」

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