「2024年早期の日経平均3万5000円目標」は不変だ 市場を覆っていた4つの懸念への心配が薄れた

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なかでも、日本経済にとってマイナス要因として投資家に懸念されていた地政学リスクについて、ある程度のメドがついたことが日本株にとって追い風となった。これは前回の「『年末年始までに日経平均3万5000円』は可能だ」(10月31日配信)でもふれたとおりだ。

例えば、最大のリスクとして注目していた米中対立には改善の兆しがみてとれる。バイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月15日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて対面での会談を実施した。

米中対立の風向きは明らかに変わっている。日本からの米中両国向けの輸出額は、輸出全体の約4割を占める。その2カ国の関係が悪いことが、日本経済にとっていいはずがない。米中間に関係改善の傾向が出てきたことは、海外投資家にとっては日本へ投資をする理由になり、日経平均の押し上げ要因となる。

また、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が株式市場に与える影響は限定的だとみる。現在はイスラエルとハマスの限定的な争いだ。

もちろんこれがレバノンの親イラン組織であるヒズボラやイラン、そしてアメリカを巻き込んだ大規模な戦争に発展する懸念は消えていない。ただイランの首脳レベルが繰り返し「戦争の拡大は望まない」と明言しており、メインシナリオとしては考えていない。

サプライズ決算でも、エヌビディアが売られたワケ

一方、直近の市場では、11月21日のエヌビディアの決算が大きく注目されたが、5月と8月に続く「3度目のエヌビディア祭り」は短期的には不発に終わった。時間外取引では株価下落で反応した。

同社の第4四半期(2023年11月~2024年1月期)におけるアナリストの売上高予想の市場コンセンサス平均は179億ドル(最大は210億ドル)だった。結局、会社予想は200億ドルとマーケットコンセンサス平均を上回りサプライズとなったが、株価の反応は時間外で3%安となった。

この株価の反応に、多くの専門家等の期待が外れ、中には首をかしげる光景もあった。ただ私の見解は、短期的には「セル・ザ・ファクト」だ。「噂で買って事実で売る」との格言(ことわざ)どおり、すでに同株価が史上最高値を更新していたことで、今回の好決算は織り込まれていたとみるべきだろう。

中国向けの売り上げ予想が同社の計画を押し下げたが、市場は第4四半期売上高予想250億ドル程度を期待していたのかもしれない。今後は、会社予想に対して、さらに強気なアナリストの業績予想が出てくるかに注目が集まるだろう。

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