迫る物流「2024年問題」運転手不足が追い打ち 残業時間の上限規制で物流コスト上昇の公算
トラックを100台超保有する奈良県の運送会社ハンナの下村由加里社長は、一番大きな影響を受けるのは「われわれを地域で支えているパートナー企業。われわれが雇っている小さな運送会社だ」と指摘。「そういう会社が管理不能を起こす」と語った。
政府は人手不足を緩和するため、輸送手段を鉄道や船舶に振り替える「モーダルシフト」など、さまざまな物流対策を進めている。現行、国内貨物の9割余りがトラックによる輸送だ。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)理事でJILS総合研究所の北條英所長は、旅客輸送が中心の国内の鉄道網や海運業界における船員の高齢化などを踏まえると、大きなモーダルシフトが可能とはみていない。
業界のデジタル化も必要
他の課題としては、トラック運転手の待ち時間削減と効率化のための業界のデジタル化だ。規制強化まで残り4カ月となる中、小規模事業者は依然として紙の伝票を利用しており、多くはデジタル化に対応できる人材がいないと下村氏は語った。
一方、警察庁の有識者検討会では、大型トラックの高速道路での制限速度を現行の時速80キロから引き上げる案が検討されている。ただ、安全性の問題から慎重な声も出ている。
政府は荷物の再配達削減を消費者に促すためにポイント還元制度の導入を計画している。運転手を増やすため女性や外国人労働者の雇用拡大を促す取り組みも検討されている。
運送会社が運賃の値上げを始める中、当面最も打撃を受けるのは他の業界かもしれない。東京商工リサーチが10月に実施した調査によると、24年問題で「マイナス」の影響が生じるとみている企業の割合は食料品製造業や飲食料品卸売業などで8割を超え、大半が運送コストの上昇を懸念している。
北條氏は、運賃を「引き上げないとつぶれる会社が出てくる」と指摘。運賃は全体的に上がっているが、この傾向がどの程度進むのか、非常に利幅が薄い小規模事業者に値上げの影響が届くのか不透明だとの見方を示した。6万社を超える運送事業者のうち、少なくとも一部の小規模事業者は、顧客維持のために運賃を低く抑えざるを得ないと感じているかもしれないという。
ハンナの下村氏は、最終的に顧客は恐らく、荷物の到着までに時間がかかる品質の劣るサービスを受け入れるか、従来のサービスを受けるためにより高い料金を支払うかの選択を迫られることになると述べた。
下村氏は「物が運べなくなることはない。安く運べなくなるだけだ」と語った。
原題:Japan Fears Trucking Crisis as Overtime Clampdown Looms(抜粋)
--取材協力:横山恵利香.
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著者:Isabel Reynolds
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