元引きこもりが「マッチョ×介護」で業界を変える 詐欺に遭い、借金400万円から起業の逆転人生

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実業団の選手が働いていることで、利用者からもポジティブな反応が寄せられている。

「選手たちが減量に苦しんでいる姿や、コンテストで結果を残して讃えられているのを見ることが、利用者さんにとっていい刺激になっています。障害者の方が『歌のコンテストに挑戦したい』とおっしゃったり、ご家族が筋トレを始められたり、ポジティブな連鎖が増えていると感じます」

どん底状態の自分を救ってくれた介護の世界

そもそも、丹羽氏が美容師から介護業界へ転身したきっかけは何だったのだろうか。

「専門学校卒業後、名古屋の栄にある美容室で働いていましたが、周りにスーパースターのような美容師がいるなかで中途半端な自分が成り上がっていくイメージが持てなくなりました。当時は堀江貴文さんや藤田晋さんが世間を騒がせていた頃で、『自分も起業してみたい』という勢いで辞めてしまいました。

ふらふらと異業種交流会に出入りしていると、怪しい人たちと知り合うようになりました。人を見極めることができず、羽振りの良さそうな人と付き合って仕事を手伝わされたあげく給料がもらえなかったこともあります。最終的には人に騙され、400万円の借金を負わされてしまいました」

当時23歳だった丹羽氏は実家に戻り、人間不信から引きこもる生活を送るようになった。そんな姿を見かねた母が、丹羽氏の姉が長年勤めていたホームヘルパー(訪問介護員)の仕事を手伝うよう勧めたという。

「あなたは、他人から騙されるくらい素直で優しいのだから、介護の仕事が向いているかもしれない」

母の言葉に促され、姉の訪問介護に同行して美容師として利用者の髪を切るようになった。

「訪問介護を始めて、『こんなダメな自分にありがとうと言ってくれる人がいるんだ』と希望を感じました。

また、詐欺に遭ったことでお金と大人への恐怖を植え付けられていたので、国の介護保険料で報酬が支払われるシステムは安心できました。『今の自分が社会復帰するためには、介護の仕事しかない』と、介護ビジネスで起業することを決めました」

(写真:ビジョナリー提供)
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