「私人逮捕系ユーチューバー」応援する人々の盲点 褒めそやす人たちにも大きな問題がある
警察官などによらない、いわゆる「私人逮捕」は、制度としては実在している。刑事訴訟法第213条で「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と明文化されているが、その条件もまた、厳格に定められている。
同第212条によると、現行犯人の定義は「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」であり、また、(1)犯人として追呼されているとき(2)贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき(3)身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき(4)誰何されて逃走しようとするとき。以上のいずれかにあたる者が「罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるとき」も現行犯人と見なされる。
より詳しい解説はプロに任せるが、こうした法的根拠があるにもかかわらず、このごろ言葉としての「私人逮捕」がひとり歩きしている感は否めない。事実、ネット上では法曹関係者から、「現行犯人と言えるのか」といった指摘もなされている。
金儲けや名声のために「私人逮捕」が行われるまで
フジテレビなどの報道によると、「ガッツch」の男は、逮捕前に「私人逮捕を世に広めたのは自分だ」と話していたという。たしかにニュースの見出しになったのは、彼の影響も大きいだろう。しかし筆者が思い出したのは、数年前に話題になった事例だ。
かつて、元参院議員の立花孝志氏が立ち上げた「NHKから国民を守る党」(度々の名称変更を経て「政治家女子48党」となり、現在は党首の地位をめぐり、「みんなでつくる党」「NHKから国民を守る党」が争っている)は、選挙演説中のヤジに対し、選挙妨害だとして、110番通報の上で「私人逮捕」する動画をYouTubeに投稿していた。いまも立花氏のチャンネルには、2019年の動画が残されている。
おそらく当時は、「主張する手段」としてのYouTube投稿だったのだろう。しかし、時代の変化にあわせて、「私人逮捕の様子は、金を生むコンテンツになる」と認識する人々が増えるようになったようだ。
その数年の間には、いわゆる「迷惑系」や「暴露系」と呼ばれるYouTuberが、着実に市民権を得てきていた。ガーシー元参院議員や、へずまりゅう氏らの背中を追いかけて、「一旗揚げよう」と思う人たちが増えてもおかしくはない。
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