常識破り「国策半導体ラピダス」成功に必要なこと 日本の産業界復活を担うことができるか

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これに地政学的な大変動をもたらしたのが、米中摩擦を機に2020年から始まった半導体輸出規制だ。2022年8月成立のCHIPS法で、アメリカ政府は国内の半導体投資に500億ドルの助成金を交付する代わりに、今後10年間、中国での半導体製造の新規投資が禁じられることになった。その後の輸出規制強化により、半導体の製造拠点は中国や台湾から、アメリカそして日本にシフトし始めているのだ。

「短TAT」がラピダスの特徴

さて、この流れに乗ってラピダスは日本の半導体再起を懸け、日米欧連合での開発と製造を担うことになっている。まずラピダスの戦略を見てみよう。

何といっても特徴的なのは、短TAT(Turn Around Time=製造の全工程、あるいは工程の一部を処理するのに要する時間)による少量多品種生産という、これまでのファウンドリーの常識を覆す戦略になっていることだ。

設計と製造の同時最適化であるDMCO(Design Manufacturing Co-Optimization)を目指すという。それを実現するため、AIとセンサを活用して製造工程で得られたビッグデータを活用して設計の効率化をはかるMFD(Manufacturing For Design)という概念を取り入れる。

ラピダスでは、枚葉処理で1枚ごとに多くのビッグデータを収集することでバッチ式と比べ100倍ものビッグデータが得られると主張している。これらのデータを設計側にフィードバックすることでMFDが可能となり、PDK(Process Design Kit=ある特定の半導体を作るための設計データをまとめたもの)におけるプロセスマージンや設計マージンを広げられると主張している。

現在は設計・ウェハー製造・パッケージングの水平分業が主流だが、ラピダスはそれぞれの間の壁を取り払い、設計・ウェハー工程・パッケージングを一体化したRUMS(Rapid & Unified Manufacturing Service)という新形態で運営し、開発効率とスピードを向上させるとともにコスト削減を図るという。

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