アニメ会社が「あの石油大国」でこぞって狙う金脈 サウジの「オイルマネー」に熱視線が集まる理由
サウジはイスラム教の影響により、映画館の営業を禁止するなどして娯楽活動を大きく制限してきた。
しかし、ビジョンでは「国内における文化・娯楽活動への支出を、総家計支出の2.9%から6%に引き上げる」という具体的目標を設定。2017年に映画館営業を解禁するなど、国家的な方針転換に踏み切った。
こうした中でサウジが目をつけたのが、日本のゲームやアニメだった。サウジ政府系の投資ファンド、パブリック・インベストメント・ファンドは、2022年から任天堂や、子会社に東映アニメーションを持つ東映の株式の大量保有者となっている。
さらに同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、”アニメ好き”として業界内でも広く知られているほどだ。
皇太子就任を機に進んだ“関係修復”
現地企業によるアニメ事業の展開も勢いを増している。
「コンテンツ産業におけるわれわれの役割は、石油産業におけるサウジアラムコと同じ。サウジアラビアで油田が発見された当時は外国企業に頼る必要があったが、サウジアラムコの登場以来、さまざまな産業が生まれていった」
そう話すのは、コンテンツ制作企業「マンガプロダクションズ」のイサム・ブカーリCEOだ。同社はムハンマド皇太子が直轄する、ミスク財団の子会社。アニメやゲームの制作・配給などを軸に、サウジのエンタメ・コンテンツ事業を担っている。
ブカーリCEOは早稲田大学への留学経験もあり、日本語を流暢に話す。2017年にムハンマド氏が皇太子に昇格したタイミングで、マンガプロダクションズのCEOに抜擢された。
ブカーリCEOの就任後にまず進められたのが、日本を代表するアニメ制作会社である東映アニメーションとの“関係修復”だ。
東映アニメーションの清水慎治顧問によれば、サウジアラビアとのアニメ製作の企画は2011年ころから始まっていた。しかし当時はコミュニケーションなどがうまくいかず、「途中でプロジェクトが止まってしまった」(清水氏)。アニメ好きのムハンマド皇太子の就任を機に、企画を再開しようという流れになったのだという。
2社で共同制作したアニメ映画『ジャーニー』は2022年にオランダの映画祭で賞を取るなど、成功を収めた。清水氏は「サウジ企業には莫大な資金力があり、制作した映画を世界中で配給してもらえる。インドネシアやマレーシアなどのイスラム世界でも広く見られていて新鮮だった」と話す。
直近でも、人気アニメ制作会社のウィットスタジオが手がけるオリジナル作品『GREAT PRETENDER razbliuto』(2024年展開予定)で中東・北アフリカ地域でのライセンス展開を任されるなど、業界内での存在感を高めている。
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