神宮外苑、宮下公園「やりたい放題」の都市開発 行政の"異例な柔軟対応"が疑われている
その結果、宮下公園の土地は三井不動産に貸与され、その土地の上に複合施設が開発された。最上階の宮下公園は渋谷区が譲り受け、その公園の指定管理者は三井不動産と西武造園によって構成される宮下公園パートナーズが担う。
4階の北端にはホテルの受付があり、4〜18階がホテル棟となっている。公園の敷地だった場所にホテルを建設するという異例の開発の過程では、数々の調整が行われた。
渋谷区にはもともとホテル建設についての厳しい規制が存在する。「客が従業員と面接しないで、機械その他の設備を操作することにより客室の選択、鍵の交付、料金の支払い等ができる施設を設置しないこと」という基準がある。渋谷区ラブホテル建築規制条例である。
にもかかわらず、宮下公園の北端にあるこのホテルは「スマートなチェックイン」を掲げ、対面することなくタブレットを操作するだけでチェックインできる。
夜間になると紫色などにライトアップされる公園内のスケルトンエレベーターも異例だ。外装に透明アクリルパネルが使われ、内部が見えるようになっている。
一般に、エレベーターの昇降路内に装飾のための設備を設置することは禁止されている。しかし、ここでは点検用照明という名目でLED(発光ダイオード)の設置が許可された。ある建築関係者は「宮下公園の施設だけ、行政が異例なほど柔軟に対応している」と特別対応をいぶかしむ。
渋谷区への恨み節も
再開発の関係者からは渋谷区への恨み節も聞こえる。
「屋上の公園は、管理のしやすさから人工芝を推奨した。しかし、渋谷区の幹部が米ニューヨークへ視察に行って感化された影響なのか、人工芝ではなく天然芝にすることを区から強く望まれた。結局、天然芝が採用され、今はその養生のために芝部分が入場禁止になっていることが多く、利用者のメリットになっていない」(再開発の関係者)
宮下公園の再開発は、全国の自治体で公園開発の成功例として引き合いに出されることが多いという。しかし、開発に一定の秩序をもたらすべき行政が、特定の案件にだけ柔軟に対応すると疑われるような実情は無視できないだろう。
宮下公園の土地の借地料が適切ではないとして、渋谷区を相手取って裁判を起こした渋谷区在住の渥美昌純さんは、「行政に必要な透明性と公平性が実践されていない。継続性のない思いつきの運営」と批判する。
東京都の元職員で日比谷公園の管理所長だった高橋裕一さんも、「公園に必要なのは、商業施設のにぎわいなのか」と疑問を呈する。
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