秋田水害、住宅修理進まず、800世帯が越冬の危機 困窮する被災者、なぜ支援は届かないのか?
秋田市の場合、「被災者台帳」が未整備であることも、支援策が行き届かない一因になっている。
同台帳は地方自治体が保有する被災者に関するさまざまな情報を一元的に統合し、支援の漏れを防ぐことを目的としている。東日本大震災の教訓を踏まえて2013年の災害対策基本法改正によって、「市町村長は作成することができる」と定められた。しかし、秋田市の場合、災害発生から4カ月が過ぎているのに、いまだに被災者台帳は作成できていない。市によれば、そのメドも立っていないという。
被災者台帳には、被災者の氏名や生年月日、住所、住宅の被害状況、要配慮者であるか否かなどの個人情報とともに、罹災証明書の交付、住宅の応急修理など援護の実施状況などを盛り込むことができる。内閣府の説明資料によれば、マイナンバーを活用することで「総合的かつ効果的な被災者への援護の実施」につなげられるとされている。
もっとも、被災者台帳の整備が遅れ、災害が起きた後も場当たり的に対応している自治体は少なくない。こうした問題は秋田市に限ったことではない。
その結果として、1人暮らしの高齢者や障害者など災害弱者への支援が遅れ、生活困窮や孤立死などにつながりかねない。
冬が迫る中、時間との闘いに
秋田市楢山大元町は、市内で最も深刻な浸水被害に遭った地区だ。同町で自治会長を務める伊藤達男さん(77歳)によれば、「167世帯のうち110世帯が水害で被災した。11月現在でも修理に着手できたのは4割程度で、手付かずの家がたくさんある。連絡が取れない住民も多い」。
被災者の生活再建の状況について、秋田市は現在も正確な実態をつかめないでいる。11月1日から暖房器具などのニーズ調査は始まったものの、約半数が不在で連絡が取れていない。「どの世帯がどういった住宅支援策を必要としているかについても聞き取ることまではできていない。これについては、支援体制が整った後のフェーズになる」(東海林室長)。
こうした現状について、災害法制に詳しい津久井進弁護士(日本弁護士連合会・前災害復興支援委員会委員長)は、「水害からの生活再建に関して災害救助法が有効に機能していないことの表れだ。被害の実態に法制度が整合していない」と指摘する。「マイナンバー制度は被災者支援での利用が目玉の1つとして導入されたにもかかわらず、有効活用されていない」(津久井氏)。
国も手をこまぬいているわけではない。被災者支援行政を担当する内閣府は11月に入り、秋田市からの要請に基づいて職員1人を派遣。住宅の応急修理に関する申請書類の受け付け業務などに従事している。
内閣府の飯沼宏規参事官(被災者生活再建担当)は、「秋田市との関係では、住宅の応急修理や生活必需品の給与などにかかわる救助期間を延長するなど、可能な限り柔軟に対応してきた。引き続き、秋田市から相談があれば、適切に対応していく」と東洋経済の取材に回答している。
11月中旬、東北北部は強い寒波に見舞われ、秋田県太平山では初冠雪を記録した。まもなく秋田市内でも雪が降り始める。被災者の生活再建はまさに時間との闘いだ。
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