秋田水害、住宅修理進まず、800世帯が越冬の危機 困窮する被災者、なぜ支援は届かないのか?

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今年の夏、秋田県など東北地方北部は過去に例を見ない豪雨災害に襲われた。

秋田地方気象台の発表によれば、東北地方北部で梅雨前線が停滞し、7月14日から16日にかけて秋田県を含め広範囲で記録的な大雨に見舞われた。秋田市仁別では14日からの3日間の降水量が415ミリメートルに達し、観測史上1位を更新。市内中心部でも河川の氾濫や内水氾濫が発生し、住宅および非住宅合計で4600件を上回る床上浸水の被害が生じた。市内では19日にも再び、床上浸水の被害が出た。

7月の豪雨で床上浸水した被災者宅。9月にも再び浸水の被害に遭った(住民提供)

ところが、4カ月近くが過ぎ、冬が間近に迫る現在も、被災者の生活再建が思うように進んでいないことがわかった。

下の表は、災害救助法に基づく賃貸型応急住宅(みなし仮設住宅)および住宅の応急修理の利用状況(11月1日時点)だ。東洋経済記者が、秋田県および秋田市の関係部署に問い合わせて一覧表を作成した。

この表からも一目瞭然だが、特に賃貸型応急住宅では、相談件数に対して、申請件数や実際の利用件数が著しく少ない。せっかく相談してもほとんどの被災者が対象外とされ、制度の利用をあきらめざるをえなくなっている実態がうかがわれる。

賃貸型応急住宅という制度では、自宅が全壊判定の場合、または半壊(大規模半壊および中規模半壊も含む)の判定でも土砂や流木などの流入によって自宅に住めない、浸水被害で耐えがたい悪臭がして生活に支障が生じている場合などに限って、民間のアパートを一時的に無償で借りることができる。

住宅の応急修理制度との併用も例外的に認められているが、あくまでも修理しなければ住めないことが前提とされている。2階建ての場合、1階が浸水しても住む場所があるとされ、利用は困難。つまり、間口が著しく狭い。

相談した人のほとんどが支援対象外に

災害救助法に基づき秋田県が定めた実施要綱に従って制度を運用した結果、秋田市では賃貸型応急住宅の相談270件に対して、申請は12件、入居完了に至ってはたったの4件(11月1日時点)と、相談した人のほとんどが利用できないという結果になった。

当初、秋田市は約250件の利用ニーズがあると見積もったが、相談した人のほとんどが対象外となった。市の職員が被災した住宅を調べて要件に該当しないと判断した場合、申請すら難しい。

床上浸水で自宅が中規模半壊の被害を受けた80代の女性の場合、賃貸型応急住宅の利用について義理の娘が秋田市に相談したものの、担当課の職員から条件に合わないと通告された。その理由について娘が尋ねたところ、「自宅が土砂に埋もれておらず、悪臭もないため」と告げられたという。

「母は病気を患っており、浸水した住宅では生活できない」と女性は訴えたが、「病気は入居の要件になっていない」と告げられた。その結果、高齢で要介護の母親はやむなく2階で寝起きしているという。

市内に住む斎藤宏一さん(67歳)は、92歳の母親の自宅が床上浸水の被害を受けた。自身の自宅も復旧の途上だ。介護保険のケアマネージャーが機転を利かせて母親のショートステイ利用にこぎ着けたが、実費がかかるうえ、母親宅も修理途上で自宅に戻るメドは立っていない。

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