販売台数も期待外れ「EV市場」に広がる不安の正体 早くも過当競争に突入、大投資は大丈夫か?
一部のアナリストは、ニッチな商品だったEVは大衆向け市場に移行しつつあるため成長の鈍化は驚きには値しない、と指摘する。大半の自動車所有者はEVについて学んでいる段階であり、メーカーや販売店は最適な販売方法を探っている。
「他者に先駆けて高価なEVを買うユーザーはたくさんいた」。そう語るのは、RBCキャピタル・マーケッツのグローバル自動車アナリスト、トム・ナラヤン氏。「今は、主流の消費者がEVの購入を検討している段階にある」。
障壁は値段と充電器
フォードの販売データには複雑なメッセージが表れている。今年の1〜10月に「マッハE」の販売が1.5%増にとどまる一方で、電動ピックアップトラック「F-150ライトニング」の販売は43%伸びた。全体としてフォードの1〜10月期のEV販売が13%増となる中で、ガソリン車の販売は7%、ハイブリッド車の販売は19%伸びた。
アナリストらによると、「マッハE」の失速はおそらくテスラ「モデルY」との競合が最大の要因だ。サイズやスタイルが近い「マッハE」と「モデルY」を比較検討している購入者は多いとみられる。テスラが値下げを行ったことで、「モデルY」の最安モデルはフォード車より2500ドル(約38万円)も安くなっている(税優遇適用後の実質価格)。
調査からは、消費者がEVに関心を持ちながらも、なかなか手を出せない状況が見えてくる。コックス・オートモーティブによると、アメリカにおけるEV1台当たりの購入価格は9月に平均5万1000ドル(約774万円)を下回った。
昨年の6万5000ドル(現在の為替レートで約986万円)から大幅に下がったとはいえ、多くの新車購入者にとってはまだ高すぎる。金利の上昇によって月々の支払い負担が高まってきていることを考えれば、なおさらだ。アメリカ連邦準備制度理事会のデータによると、2022年はじめに5%に満たなかった自動車ローン金利は現在、8%を上回るようになっている。