リニア「中間4駅」活性化の議論に足りない視点 客を呼び込むためには「何本停まるか」が重要

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一方で、森地名誉教授は「1時間に何本停まるかは駅の需要動向によって決まってくる」とも話す。停車回数をむやみに増やしたところで、そのまま利用者が増えるとは限らない。需要が少なければ停車を増やしても乗客は増えないので、おのずと停車回数は減る。北海道新幹線には1時間に1本どころか、1日に7本程度しか停まらない駅もある。

リニアが完成に近づき運行計画が練られる段階になれば、中間駅に何本停まるかという議論が重要性を帯びてくる。おそらく各県から「できるだけたくさん停めてほしい」という要望がJR東海に寄せられるはずで、その際には中間駅の需要がどのくらいあるかが決め手になる。

そのためにも、各県は中間駅周辺の需要動向だけでなく、県をまたぐ広域から利用者を呼び込んで需要を大きく増やせるような計画を今から構築しておくことが重要となる。

沿線4県も静岡県に働きかけを

なお、各県の知事からはJR東海に開業時期の明確化を求める声が相次いだ。開業時期が決まらないと具体的な施策を立てられないし、その地域に進出を検討する企業にしても、開業時期が未定のままでは判断しようがないからだ。

南アルプストンネル工事
工事中の南アルプストンネル。未着工の静岡工区とは裏腹に山梨県内では工事が進む=2021年(撮影:尾形文繁)

とはいえ、静岡県の反対により静岡工区の工事が始まらない状況では、JR東海も開業時期を決めようがない。4県の知事たちは壇上から降りたその足で首相官邸に出向き、岸田文雄首相に面会して、「リニア開業時期の見通しをつけてほしい」と迫った。これに対して、岸田首相は「ぜひ知事のみなさんも全体のプロジェクトが進むように、関係自治体等にも働きかけてもらいたい」と返した。

他人事のような返答が気になったが、岸田首相の発言には正しい部分もあると思う。4県の知事はJR東海や国を当てにするだけでなく、自らも静岡県に対して工事の早期着工を働きかけることが必要だ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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