リニア「中間4駅」活性化の議論に足りない視点 客を呼び込むためには「何本停まるか」が重要

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このように各県の知事のコメントを並べてみると、中間駅を活用した地域振興策にとどまっており、森地名誉教授の言う広域中核地方圏の形成というレベルには至っていない。やはり、個々の県の取り組みだけではなく、中間駅を持つ自治体および、その周辺の自治体がタッグを組んで取り組む必要がある。さらに森地名誉教授は「国のコミットも必要。国土構造を変えることでできる体制を国も作ってほしい」とする。

リニア開業により東京、名古屋、大阪という3大都市圏だけが発展したとしても、ほかの地域が取り残され、地方が衰退するのは日本の未来にとって決してよいことではない。その点で、中間駅を核とする広域中核地方圏を形成するという方向性は間違っていないが、1つだけ気になることがある。それは、中間駅に列車が何本停車するかが考慮されていないことだ。

リニア 実験線 発車案内
実験線にある「発車案内」。はたしてリニア中央新幹線の中間駅には何本の列車が停車するか(撮影:尾形文繁)

重要なのは「中間駅の停車本数」

黒岩知事の「30分で羽田空港とつながる」を例にとれば、リニアによる品川駅から神奈川県の中間駅までの乗車時間が10分だとしても、もし1時間に1本しか中間駅に停車しないとしたら、1本乗り過ごすと次の列車まで1時間待つことになる。となると、所要時間は30分ではなく1時間30分だ。これでは在来線(京急線およびJR横浜線)を使った場合の所要時間と変わらない。

冒頭で触れた東海道新幹線が静岡県内の駅に停車する回数を増やした場合に10年間で1600億円を超える経済効果が生まれるという試算は、停車回数増によって待ち時間が短縮し、目的地への所要時間が短くなると同時に、同じ時間で到達できる範囲が拡大することにより利用者が増えるという理屈だ。つまり、リニアの利便性を生かすためには十分な停車回数が確保される必要がある。

では、1時間に何本程度停車するのが適切なのだろうか。この点を森地名誉教授に聞いてみたところ、私見と前置きしたうえで「東海道新幹線の静岡県内区間でひかりとこだましか停まらない駅の停車本数よりは多くなってほしい」とのことだった。ちなみに県庁所在地最寄りの静岡駅や、大企業が集積する浜松駅では、日中は1時間に3本程度停車する。一方で、新富士駅や掛川駅の日中の停車本数は1時間に2本程度だ。

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