たしかに、シールは長めのフロントに、短いファストバック的なリア(トランクは独立)という、ドイツやイギリスのクルマでよく見る古典的なセダンのプロポーションを持つ。
ただし、そこにとどまっているつもりは、BYDにはおそらくない。
冒頭で紹介したアジアパシフィック地域担当の劉氏は、「BYDの強みは、市場の動向をいち早くとらえて製品をアップデートしていくことだ」と、流暢な日本語で言う。
「今、中国で若い層にウケているのは“性能”と“車内エンターテインメント”、それに変わらない要素として“科学”があります。でも、少品種大量生産の時代ではない現在、市場の嗜好性は多様ですから、おのずと多品種少量生産となり、すぐに市場の変化が起こりえます。それに対応していかなくてはならないと、BYDでは考えています」
金型開発は18~20カ月→12カ月に
例に出たのが、同社が2010年に買収した金型メーカー、オギハラの館林工場(TMC)だ。
「それまでの日本での常識では、1つの金型を作るのに18~20カ月がかかっていました。それを、どんなボディサイズでも12カ月で作る(と買収のときBYDが要求した)。市場で必要なのは、設計の良さと品質はもちろん、スピードです。世の中は、私たち自動車メーカーが考えるより、早い速度で変わっています。どんなにいいものを作っても、完成した時点で『もう市場がない……』ということになりかねません。それをTMCの方々にも、理解してもらいました」
シールの開発期間がどれだけだったか、残念ながら明確な答えは得られなかったが、10年前から、eプラットフォームをベースにしたBEVのさまざまなプロジェクトが社内で“走って”いて、そのうちの1台だという。
そして「今が商機!」とみて、すぐ量産化に移った。しかし、即席とは言えない完成度の高さで、そこにBYDのオソロシイほどのパワーを感じる。ここが自動車の1つの未来で、早くもそこに到達しているのかもしれない。
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