京急の鉄道イベント、いったい何がスゴいか 「中の人」が明かす「鉄道フェスタ」の舞台裏

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これを一歩進めてカードを配る仕組みに変えたのが3年前。各部門やグループ会社の職員が、自分の仕事を紹介するカードを持ち、子どもたちに「カードちょうだい」と言われたら渡してあげるという仕組みだ。カードは駅、乗務員、車両、保線、電力、通信、バスの7種類。子どもたちが職員に声をかけるきっかけになるし、普段はお客さまに接する機会の少ない職場に務めていても、この日は子どもたちの「ヒーロー」になれるわけだ。

スタンプラリーよりコストがかかるし、職員の負担も増す。それでも、乗客とのふれあいを優先した。最近では近くの商業施設で「レアカード」をもらえる仕組みも用意している。

点検作業の合間をぬってのイベント準備

会場の設営は大変だ。立ち入り禁止区域を仕切るロープ張りや、テントの設営は開催前日に行われるが、なにしろ会場は、々点検作業が行われている鉄道車両の工場内だ。前々日には、作業工程の合間をぬって検査中の車両の移動や部品の整理が行われる。当日は、子どもたちが一緒に記念撮影ができるように、一部の電車を工場内に留置するが、このために点検サイクルをイベント開催日に合わせ、塗装が仕上がったばかりのピカピカの先頭車両を用意するというような苦労もある。

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留置された電車に鉄道ファンには、うれしいヘッドマークをつけた

工場内のレイアウトを行った、京急ファインテック計画グループのとある担当者は、留置された電車にひと工夫を加えた。事務所に保管されていたヘッドマークを取り付けたのだ。前述の初開催時に走った臨時電車のものである。

「誰か気づくかな、と。いいでしょう?」と、担当者はいたずらっ子のような表情を浮かべる。

ちょっとしたことであるが、鉄道ファンへのサービスも忘れない。

スタッフの中には、まだ初々しい新入社員の姿もあった。4月に入社し、現在は各駅で研修中の総勢65人。今日はイベントの手伝いとして会場に集まった。

日々の研修では、お客さまに厳しい言葉を頂くことも多い。夢見て入社した鉄道の世界と、現実の厳しさとのギャップに悩む日々。しかし、この日の会場では、子どもたちがキラキラと眼を輝かせて近寄ってくる。彼らも制服の膝が汚れることも気にせず、小さなお客さまに目を合わせて声をかける。忘れかけていた鉄道への期待を刻み直して、また明日から一人前の駅係員を目指して改札に立つだろう。

子どもたちから大切なことを教わる。これも、私たちが続けてきた京急ファミリー鉄道フェスタの大事な目的のひとつである。

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